錠剤を半割したり粉砕したりすると算定できる自家製剤加算ですが、算定できるパターン、できないパターンを完璧に理解している人は少ないと思います。
ここでは処方例を挙げながら自家製剤加算について解説します。この記事を読むことで、自家製剤加算を完全理解できるはずです。
自家製剤加算とは何か
まず初めに自家製剤加算とは何か見ていきましょう。「調剤報酬点数表」、「調剤報酬点数表に関する事項」には次のように書かれています。
調剤料
注6 次の薬剤を自家製剤の上調剤した場合は、各区分の所定点数に1調剤につき(イの( 1 )に掲げる場合にあっては、投与日数が7又はその端数を増すごとに)それぞれ次の点数(予製剤による場合はそれぞれ次に掲げる点数の100分の20に相当する点数)を加算する。ただし、別に厚生労働大臣が定める薬剤については、この限りでない。
イ 内服薬及び屯服薬
( 1 ) 錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の内服薬 20点
( 2 ) 錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の屯服薬 90点
( 3 ) 液剤 45点
ロ 外用薬
( 1 ) 錠剤、トローチ剤、軟・硬膏剤、パップ剤、リニメント剤、坐剤 90点
( 2 ) 点眼剤、点鼻・点耳剤、浣腸剤 75点
( 3 ) 液剤 45点
(12) 自家製剤加算
ア 「注6」の自家製剤加算は、イの(1)に掲げる場合以外の場合においては、投薬量、投薬日数等に関係なく、自家製剤による1調剤行為に対し算定し、イの(1)に掲げる錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の内服薬を自家製剤の上調剤した場合においては、自家製剤を行った投与日数が7又はその端数を増すごとに所定点数を算定する。
イ 本加算に係る自家製剤とは、個々の患者に対し市販されている医薬品の剤形では対応できない場合に、医師の指示に基づき、容易に服用できるよう調剤上の特殊な技術工夫(安定剤、溶解補助剤、懸濁剤等必要と認められる添加剤の使用、ろ過、加温、滅菌等)を行った次のような場合であり、既製剤を単に小分けする場合は該当しない。
(イ) 錠剤を粉砕して散剤とすること。
(ロ) 主薬を溶解して点眼剤を無菌に製すること。
(ハ) 主薬に基剤を加えて坐剤とすること。
ウ 「注6」のただし書に規定する「別に厚生労働大臣が定める薬剤」とは、薬価基準に収載されている薬剤と同一剤形及び同一規格を有する薬剤をいう。
エ 薬価基準に収載されている医薬品に溶媒、基剤等の賦形剤を加え、当該医薬品と異なる剤形の医薬品を自家製剤の上調剤した場合に、次の場合を除き自家製剤加算を算定できる。
(イ) 調剤した医薬品と同一剤形及び同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合
(ロ) 液剤を調剤する場合であって、薬事法上の承認事項において用時溶解して使用することとされている医薬品を交付時に溶解した場合
オ 割線のある錠剤を医師の指示に基づき分割した場合は、錠剤として算定する。ただし、分割した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合は算定できない。
カ 自家製剤加算を算定した場合には、計量混合調剤加算は算定できない。
キ 「予製剤」とは、あらかじめ想定される調剤のために、複数回分を製剤し、処方せん受付時に当該製剤を投与することをいう。
ク 通常、成人又は6歳以上の小児に対して矯味剤等を加える必要がない薬剤を6歳未満の乳幼児(以下「乳幼児」という。)に対して調剤する場合において、薬剤師が必要性を認めて、処方医の了解を得た後で、単に矯味剤等を加えて製剤した場合であっても、「注6」の「イ」を算定できる。
ケ 自家製剤を行った場合には、賦形剤の名称、分量等を含め製剤工程を調剤録等に記載すること。
コ 自家製剤は、医薬品の特性を十分理解し、薬学的に問題ないと判断される場合に限り行うこと。
上記の内容を点数表にまとめると次のようになります。
内服薬 | 錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エキス剤 | 20点/7日分 |
---|---|---|
液剤 | 45点 | |
屯服薬 | 錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、エキス剤 | 90点 |
液剤 | 45点 | |
外用薬 | 錠剤、トローチ剤、軟・硬膏剤、パップ剤、リニメント剤、坐剤 | 90点 |
点眼剤、点鼻・点耳剤、浣腸剤 | 75点 | |
液剤 | 45点 |
処方例で学ぶ自家製剤加算
処方例1
ワーファリン錠0.5mg 0.5錠
分1 朝食後 15日分
割線のある錠剤を医師の指示に基づき分割した場合は、錠剤として算定する。ただし、分割した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合は算定できない。
ですから、ワーファリン錠0.5mgに割線があり、分割した医薬品と同一規格を有する医薬品(すなわちワルファリンカリウムを2.5mg含有する医薬品)が薬価基準に収載されていない場合、自家製剤加算を算定できます。
ワーファリン錠0.5mgには割線があり、ワルファリンカリウム2.5mgを含有する医薬品は薬価収載されていませんから、半割することで自家製剤加算を算定できます。
ここで錠剤分割での自家製剤加算についてのルールをまとめておきます。
算定の条件は
②分割した医薬品と同一規格を有する医薬品が存在しない
処方例1で算定できる自家製剤加算の点数については
投与日数が7又はその端数を増すごとにそれぞれ次の点数(予製剤による場合はそれぞれ次に掲げる点数の100分の20に相当する点数)を加算する。
錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の内服薬 20点
ですから15日分の場合、20点×3=60点を算定できます。
処方例2
ブロプレス錠12mg 0.5錠
分1 朝食後 14日分
ここで疑問に思うことは、「ブロプレス錠6mgは存在しないけれど、2mg錠と4mg錠が存在する。2mg錠と4mg錠を1錠ずつ組み合わせることで6mgにできるので条件②を満たさず、自家製剤加算を算定できないのではないか」ということです。しかし、このケースでは算定可能です。
条件②はあくまで「分割した医薬品と同一規格を有する」医薬品が存在するか否かであり、つまり6mg錠が存在するか否かということです。これについては「保険調剤Q&A」に記載されていますので引用しておきます。
Q.例えば薬価基準に3mg、1mg、0.5mgという規格が収載されている錠剤について、処方医から3mg錠を1/2に分割して投与するよう指示があった場合には、自家製剤加算を算定することはできますか。それとも1mg錠と0.5mg錠を組み合わせれば対応できるという理由から、自家製剤加算の算定は認められないのでしょうか。
A.既収載品の組み合わせにより対応できるという理由だけで、ただちに自家製剤加算の算定が認められないということにはなりません。(中略)ご質問のケースでは、1mgと0.5mgという規格の錠剤が薬価収載されているため、これらの組み合わせにより対応することも考えられますが、1.5mgという規格の錠剤は薬価収載されていませんので、この要件で規定されている「算定できない」という部分には該当しないことになります。したがって、自家製剤加算の算定はあり得るものと解釈できます。(後略)
処方例3
レンドルミンD錠0.25mg 0.5錠
分1 就寝前 30日分
処方例4
ワーファリン錠0.5mg 0.5錠
分1 朝食後 30日分
ブロプレス錠12mg 0.5錠
分1 朝食後 40日分
自家製剤加算は「1調剤につき」算定できるものです。「1調剤につき」とは調剤行為ごとの単位を表すものです。服用時点が同一であっても調剤日数が異なる場合は調剤行為については「それぞれ1調剤」と扱います。
したがって処方例4では自家製剤加算を2回算定できます。点数は20点×5+20点×6=220点です。
処方例5
ワーファリン錠0.5mg 0.5錠
ブロプレス錠12mg 0.5錠
分1 朝食後 40日分
処方日数が変わるだけで自家製剤加算の算定回数が変わるのはいまいち納得できませんが、そういうルールになっていますので仕方ありません。
処方例6
ワーファリン錠0.5mg 0.5錠
分1 朝食後 30日分
ブロプレス錠12mg 0.5錠
分1 夕食後 30日分
処方例7
ワーファリン錠0.5mg 0.5錠
分1 朝食後 14日分
ムコスタ錠100mg 3錠
分3 毎食後 30日分
セレコックス錠100mg 2錠
分2 朝夕食後 30日分
マイスリー錠10mg 1錠
分1 就寝前 30日分
※内服薬調剤料はムコスタ錠、セレコックス錠、マイスリー錠の部分で3剤分算定するものとする。
処方例8
リピトール錠5mg 0.5錠
分1 夕食後 60日分
粉砕し1回分ずつ分包した場合には含量の均一性を保証できるため、自家製剤加算を算定できます。粉砕した場合の点数は20点×9=180点です。
処方例9
ワンアルファ錠0.25μg 0.5錠
分1 朝食後 25日分
なぜ粉砕しても自家製剤加算を算定できないかというと、アルファロール散1μg/gが薬価収載されているからです。ワンアルファ錠とアルファロール散の薬効成分はともにアルファカルシドールです。
本加算に係る自家製剤とは、個々の患者に対し市販されている医薬品の剤形では対応できない場合に、医師の指示に基づき、容易に服用できるよう調剤上の特殊な技術工夫(安定剤、溶解補助剤、懸濁剤等必要と認められる添加剤の使用、ろ過、加温、滅菌等)を行った次のような場合
ですから、市販されている医薬品と同一の剤形で対応可能の場合は自家製剤加算を算定できません。したがって、ワンアルファ錠0.25μgは半割しても粉砕しても自家製剤加算は算定できません。
処方例10
タケプロンOD錠15mg 1錠(粉砕)
分1 就寝前 10日分
自家製剤は、医薬品の特性を十分理解し、薬学的に問題ないと判断される場合に限り行うこと。
というルールがありますので、薬学的に問題のある調剤行為に対して自家製剤加算を算定することはできません。処方例10を薬局で受け付けた場合には、タケプロンを粉末で交付する必要性を確認した上で処方医に疑義照会を行い、タケプロンカプセル15mg 1capに変更してもらい、脱カプセルして1回分ずつ分包するのが良いでしょう。この場合、脱カプセルという調剤行為に対し自家製剤加算を算定できます。点数は20点×2=40点です。
処方例11
メイラックス錠1mg 0.5錠
分1 就寝前 14日分
割線模様とは、読んで字のごとく、割線のような模様です。割線に沿って半割した場合には含量の均一性が保証されますが、割線模様に沿って半割した場合には保証されません。割線なのか割線模様なのかは、添付文書を見て判断します。割線の場合、添付文書に必ず「割線」と書かれています。添付文書に「割線」と書かれていない場合、それは割線ではなく割線模様です。
したがって、メイラックス錠1mgを割線模様に沿って半割した場合、含量の均一性が保証されません。しかしながら、割線模様に沿って半割するときれいに二分割され、含量は均一になっていると判断して問題なさそうです。自家製剤加算の算定については認められる場合と認められない場合があり、ここではっきりと回答をすることができません。
しかし、割線模様に沿った分割であっても自家製剤加算を算定できる場合があります。それはフルイトラン錠2mgです。
平成16年の疑義解釈には次のように書かれています。
Q.割線のある錠剤の4分割は算定可か。
A.フルイトランなど客観的に均一にできる根拠があれば算定可能。また、医師の了解を得た上で散剤として製剤した場合には、自家製剤加算が算定可能である。
平成16年当時はフルイトラン錠は2mgのみ薬価収載されていました。フルイトラン錠2mgの錠剤写真はこちらです。
ご覧いただければ分かるように、錠剤には4分割できそうな線が入っています。しかしフルイトランの添付文書には割線の文字はありませんので、これは割線ではなく割線模様です。
しかしながら、疑義解釈資料から分かる通り、フルイトラン錠2mgについては、「割線ではないが客観的に均一にできる」と厚生労働省が認めていますので、割線に沿った4分割で自家製剤加算が算定可能です。
割線模様を持つその他の医薬品については言及がありませんのが、レセプトや個別指導で「客観的に均一にできる根拠」を示せるのであれば自信を持って算定して良いでしょう。
話をメイラックスに戻します。半割では自家製剤加算が算定できないかもしれないなら粉砕しようとお考えの方がいらっしゃるかもしれませんが、メイラックス細粒1%が薬価収載されているため、粉砕した場合、確実に自家製剤加算は算定不可です。
処方例12
セフゾン細粒小児用10% 1.3g
ムコダインシロップ5% 9mL
分3 毎食後 5日分
上記を混合
処方例13
クラリスドライシロップ10%小児用 1.5g
ムコダインシロップ5% 9mL
分3 毎食後 5日分
上記を混合
自家製剤加算と計量混合加算については、技術的により難易度の高い製剤行為は自家製剤加算、それ以外の製剤行為は計量混合加算と整理されています。ドライシロップと液剤のように混合が容易なものについては、計量混合加算として算定します。
したがって、ドライシロップと液剤の混合は計量混合加算、ドライシロップ以外の散剤と液剤の混合は自家製剤加算に該当します。処方例14では計量混合加算35点を算定します。
処方例14
ワーファリン錠0.5mg 0.5錠
分1 朝食後 14日分
クラビット細粒10% 5g
ミヤBM細粒 1.5g
分1 朝食後 5日分
自家製剤加算を算定した場合には、計量混合調剤加算は算定できない。
というルールがありますので、同一剤において自家製剤加算と計量混合加算を同時に算定することはできません。
計量混合加算について詳しくは以下の記事をご覧ください。
処方例15
ワーファリン錠0.5mg 0.5錠
分1 朝食後 14日分
クラビット細粒10% 5g
ミヤBM細粒 1.5g
分1 夕食後 5日分
処方例16
ワーファリン錠0.5mg 0.5錠
分1 朝食後 14日分
ブロプレス錠4mg 1錠
分1 夕食後 14日分
アダラートCR錠40mg 2錠
分2 朝夕食後 14日分
上記すべて一包化
処方例17
ワーファリン錠0.5mg 0.5錠
分1 就寝前 14日分
ブロプレス錠4mg 1錠
分1 夕食後 14日分
アダラートCR錠40mg 2錠
分2 朝夕食後 14日分
上記すべて一包化