薬剤師による調剤薬局の仕事解説

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メトホルミンと併用注意?薬局薬剤師が知っておくべき造影剤の解説

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「検査で造影剤を使うのでメトホルミンを中止するように言われたのですが、メトホルミンってどの薬ですか?」

薬局でこのような質問を受けることが時々あります。質問を受けて初めて、メトホルミンと併用できない造影剤があるということを知った薬剤師も多いのではないでしょうか。

また、それと同時にいろいろな疑問が湧きあがってきたのではないでしょうか。

メトホルミンと併用できない造影剤とは、一体何?
なぜ併用できないの?
メトホルミン以外の薬は併用して大丈夫なの?

この記事では造影剤について解説します。この記事を読むことで、これらの疑問に答えることができるようになります。

薬局薬剤師にとって造影剤は未知の世界ですが、この記事で知識をつけていただければと思います。



造影剤とは何か?

造影剤とは、画像診断の際に明確な像を得るために、画像にコントラストをつける、特定の組織を強調するなどの目的で患者に投与される医薬品のことです。

画像診断とは、例えばレントゲン検査、CT検査、MRI検査などです。当然、画像診断の種類によって使用される造影剤も異なります。

以下では、画像診断の種類とそれらに使用される造影剤の組み合わせについてまとめています。


画像診断と造影剤の組み合わせ

画像診断の種類 検査の種類 使用される造影剤
エックス線 レントゲン、CT、血管撮影 ヨード造影剤、硫酸バリウムなど
核磁気共鳴 MRI ガドリニウム造影剤など
超音波 エコー 微小気泡超音波造影剤
放射性同位元素 シンチグラフィ、SPECT、PET 放射性同位元素*1
画像診断は画像化に利用する手段により、エックス線、核磁気共鳴、超音波、放射性同位元素の4つに大別できます。

内視鏡検査、眼底カメラなどの器官を可視光線の元で撮影する方法は、ここでは画像診断に含めません。

また、詳しくは後述しますが、薬局薬剤師が注意すべき造影剤はエックス線撮影時に使用されるヨード系造影剤です。ヨード系造影剤使用時にはビグアナイド系糖尿病薬を一時中止する必要があります。

エックス線

エックス線を利用する検査には、レントゲン検査、CT検査、血管造影検査などがあります。血管造影検査とは心臓カテーテル検査、頭部血管造影検査などのことです。

造影剤として一番有名なのは胃部レントゲン検査で使用される硫酸バリウムでしょう。硫酸バリウムを血管内投与することはできず、血管内投与する場合には主にヨード系造影剤が使用されます。

必ずしも造影剤が使用されるわけではなく、CT検査の場合、造影剤を使用しないものを単純CT検査、使用するものを造影CT検査と呼びます。

核磁気共鳴

核磁気共鳴を利用する検査はMRI検査です。MRI検査で使用される造影剤は主にガドリニウム造影剤です。

CT検査と同様、造影剤を使用しないものを単純MRI検査、使用するものを造影MRI検査と呼びます。

超音波

超音波を利用する検査を超音波検査、エコー検査と呼びます。使用される造影剤は微小気泡超音波造影剤です。超音波検査に造影剤が使われるということを知らない方も多いと思います。

超音波検査はCT検査やMRI検査と比べると病変の描出能は低いものでしたが、専用の造影剤が開発されたことで検査の精度が格段に向上し、病変を正確に描出できるようになったのです。

造影剤が用いられるものを造影超音波検査と呼びます。造影超音波検査は主に肝臓の腫瘍に対して適応されますが、膵臓、胆嚢、腸の腫瘍の診断に用いられることもあります。

放射性同位元素

放射性同位元素を利用する検査には、シンチグラフィ、SPECT、PETなどがあります。体内に投与した放射性同位体から放出される放射線を検出し、その分布を画像化する検査です。

例えば骨シンチグラフィに使用される放射性同位元素テクネチウム99mは、骨代謝が亢進した造骨部分により多く吸着することから、その分布を画像化することで病変部を描出することができます。

放射性同位体は造影剤ではありませんが、検査時に投与される医薬品という観点から、ここに記載しています。


注意すべきはヨード系造影剤

ここまで画像診断と造影剤について見てきましたが、薬局薬剤師が注意すべき造影剤はエックス線撮影時に使用されるヨード系造影剤です。その他の造影剤については、薬局薬剤師がチェックすべき併用注意などはありません。

ヨード系造影剤使用時にはメトホルミンなどのビグアナイド系糖尿病薬を一時中止する必要があります。

ヨード造影剤を用いて検査を行う患者においては、本剤の併用により乳酸アシドーシスを起こすことがあるので、検査前は本剤の投与を一時的に中止すること(ただし、緊急に検査を行う必要がある場合を除く)。ヨード造影剤投与後48時間は本剤の投与を再開しないこと。なお、投与再開時には、患者の状態に注意すること。

メトグルコ錠250mg添付文書より引用

併用注意の理由としては、ヨード系造影剤により腎障害が生じることがあり、腎障害を生じた場合、ビグアナイド系糖尿病薬の排泄が遅延し、乳酸アシドーシスが起こりやすくなるためです。

ヨード系造影剤投与前後のメトホルミンの中止期間について、大日本住友製薬のよくあるご質問【Q&A】には次のように記載されています。

ヨード造影剤投与前後は、どのくらい休薬すればいいですか?

ヨード造影剤を用いた検査前については、何時間前に中止しなければならないという具体的な目安はありません。
予め対応可能な範囲で、メトグルコの投与を一時的に中止してください。ただし、緊急に検査を行う必要がある場合を除きます。
また、ヨード造影剤投与後48時間はメトグルコの投与を再開しないでください。なお、投与再開時には患者の状態に注意してください。

検査前については、中止期間について具体的な目安はないようです。検査を行う各医療期間でルールが決められているはずですので、患者が把握していない場合は問い合わせるのが良いでしょう。

まとめ

この記事では造影剤について解説しました。

基本的には、ヨード系造影剤使用時にはビグアナイド系糖尿病薬を一時中止する必要があるということさえ覚えておけば良いでしょう。



*1:正確には造影剤ではありませんが、検査時に投与される医薬品という観点から、わかりやすさを優先して表に記載しました。

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