後発医薬品への変更調剤は薬局で頻繁に行われています。しかし後発医薬品への変更調剤のルールは意外にややこしいため、理解が完全でない人も多いのではないでしょうか。
ここでは後発医薬品への変更調剤のルールを詳細に解説します。この記事を読んで理解を深めていただきたいと思います。
そもそも変更調剤とは
変更調剤とは、処方薬に代えて後発医薬品を調剤することです。
薬剤師法第23条の2には「薬剤師は、処方せんに記載された医薬品につき、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師の同意を得た場合を除くほか、これを変更して調剤してはならない。」と定められています。ですから通常、薬剤師は処方薬をそのまま調剤しなければならないのですが、変更調剤については例外的に認められています。
したがって、変更調剤のルールの範囲内であれば疑義照会なしに処方薬に代えて後発医薬品を調剤することができます。
変更調剤のルール
ではここからは、後発医薬品への変更調剤のルールを詳しく見ていきましょう。内服薬と外用薬でルールが異なりますのでそれぞれ解説します。
内服薬の場合
内服薬の場合、次の4つの条件のいずれかを満たすと変更調剤が可能です。
以下②~④は「変更調剤後の薬剤料が変更前と同額又はそれ以下であること」が共通条件
②同一剤形で含量規格が異なる後発医薬品への変更
③同一規格で類似する別剤形の後発医薬品への変更
④類似した剤形かつ規格含量が異なる後発医薬品への変更
アムロジピン錠5mg「CH」(薬価20円)1錠
→アムロジピン錠5mg「EMEC」(薬価26.2円)1錠に変更
分1 朝食後 30日分
次に条件②について見てみましょう。
酸化マグネシウム錠250mg「ヨシダ」(薬価5.6円)6錠
→酸化マグネシウム錠500mg「ケンエー」(薬価5.6円)3錠に変更
分3 毎食後 30日分
酸化マグネシウム錠500mg「ケンエー」(薬価5.6円)3錠
→酸化マグネシウム錠250mg「ヨシダ」(薬価5.6円)6錠に変更
分3 毎食後 30日分
ちなみに薬剤料については薬価(円)ではなく、薬剤料(点)で比較します。日本薬剤師会から以下のQ&Aが出ています。
Q.処方せんに記載された医薬品を①含量規格が異なる後発医薬品または②類似する別剤形の後発医薬品-に変更調剤する場合、「患者に対して説明し同意を得ることを条件」に、「変更調剤後の薬剤料が変更前のものと比較して同額以下であるものに限り」認められているが、比較にあたっては薬価(円)でなく、薬剤料(点)によるものと理解してよいか。
A.そのとおり。
では次に、処方例4、処方例5はそれぞれ疑義照会なしに変更調剤可能か考えてみてください。
メリスロン錠12mg(薬価11.7円)3錠
→ベタヒスチンメシル酸塩錠6mg「TCK」(薬価6円)6錠に変更
分3 毎食後 30日分
ニコランジル錠5mg「トーワ」(薬価6.6円)3錠
メリスロン錠12mg(薬価11.7円)3錠
→ベタヒスチンメシル酸塩錠6mg「TCK」(薬価6円)6錠に変更
分3 毎食後 30日分
処方例4では変更前薬剤料120点、変更後薬剤料120点です。処方例5では変更前薬剤料150点、変更後薬剤料180点です。変更調剤の内容が同じであっても、他の薬剤との組み合わせによって変更の可否が変わってくることがあるので注意が必要です。
普段は処方例4の処方せんを持ってきている患者が、ある日処方例5の処方せんを持ってきた場合、今までは変更調剤できたのに、今回は変更調剤できないということになります。そういった場合、変更できない理由を患者に説明できますか?変更調剤のルールをきちんと把握しておかないと、そういう時に困ってしまうことになります。
処方例6は変更調剤可能でしょうか。
メトグルコ錠250mg(薬価9.9円)1錠
→メトホルミン塩酸塩錠500mgMT「DSEP」(薬価9.9円)0.5錠に変更
分1 朝食後 30日分
Q.処方せんに記載された医薬品を含量規格が異なる後発医薬品に変更して調剤する場合、患者の同意が得られ、かつ、薬剤料が同額以下であれば可能だが、たとえば1 錠10mg が処方されているケースで、1 錠20mg を半錠化したものに変更することも可能か。
A.差し支えない。
次に条件③を見てみましょう。処方例7は変更可、処方例8は変更不可です。詳しい解説は不要でしょう。
ノルバスクOD錠5mg(薬価48.7円)1錠
→アムロジピン錠5mg「EMEC」(薬価26.2円)1錠に変更
分1 朝食後 30日分
アムロジピンOD錠5mg「サンド」(薬価20円)1錠
→アムロジピン錠5mg「EMEC」(薬価26.2円)1錠に変更
分1 朝食後 30日分
類似する別剤形の医薬品とは、内服薬であって、次の各号に掲げる分類の範囲内の他の医薬品をいうものであること。
ア 錠剤(普通錠)、錠剤(口腔内崩壊錠)、カプセル剤、丸剤
イ 散剤、顆粒剤、細粒剤、末剤、ドライシロップ剤(内服用固形剤として調剤する場合に限る。)
ウ 液剤、シロップ剤、ドライシロップ剤(内服用液剤として調剤する場合に限る。)
チュアブル錠、ゼリー剤などの特殊剤形については記載がありませんが、チュアブル錠は上記のア、ゼリー剤は上記のウに該当するものと考えられます。
処方例9は変更調剤可能でしょうか。
ガスター錠20mg(薬価42.2円)1錠 粉砕
→ファモチジン散10%「サワイ」(薬価83.1円)0.2gに変更
分1 就寝前 30日分
(問1) 類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤に関して、変更調剤後の薬剤料が変更前のものと比較して同額以下であり、かつ、患者の同意が得られた場合、以下の例についても、処方医に事前に確認することなく変更調剤することが可能と考えてよいか。
(注:「↓」の上側が処方せんの記載内容、下側が調剤する内容を示す。)
先発医薬品(10mg錠剤) 1錠
(「錠剤を粉砕すること」との指示あり)
1日1回 朝食後
↓
後発医薬品(散剤) 10mg
1日1回 朝食後
次に条件④です。処方例10は変更可、処方例11は変更不可です。
ノルバスクOD錠2.5mg(薬価26.7円)2錠
→アムロジピン錠5mg「EMEC」(薬価26.2円)1錠に変更
分1 朝食後 30日分
アムロジピンOD錠5mg「NP」(薬価20円)1錠
→アムロジピン錠2.5mg「EMEC」(薬価14.2円)2錠に変更
分1 朝食後 30日分
外用薬の場合
外用薬の場合、次の2つの条件のいずれかを満たすと変更調剤が可能です。
②変更調剤後の薬剤料が変更前と同額又はそれ以下であり、同一剤形で含量規格が異なる後発医薬品への変更
条件①について見てみましょう。
ヒルドイドソフト軟膏0.3%(薬価23.7円)100g
→ヘパリン類似物質油性クリーム0.3%「日医工」(薬価9円)100gに変更
1日2回 手足に塗布
処方例13では変更調剤が可能でしょうか。
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏0.05%「JG」(薬価14.5円)100g
ヒルドイドソフト軟膏0.3%(薬価23.7円)100g
→ヘパリン類似物質油性クリーム0.3%「日医工」(薬価9円)100gに変更
上記混合
1日2回 手足に塗布
このように軟膏、クリームなどの塗り薬、特に他剤と混合する場合には、配合変化について注意し、問題がないと確認した上で変更調剤を行わなければなりません。配合変化については以下の書籍を薬局に備えておき必要に応じて参照するとよいでしょう。
ホクナリンテープ2mg(薬価73.8円)7枚
→ツロブテロールテープ1mg「HMT」(薬価34.9円)14枚に変更
1日1回貼付 7日分
一般名処方の場合
一般名処方の場合も銘柄名処方の場合と同様、変更調剤が可能です。日本薬剤師会のQ&Aには以下のように書かれています。
Q.一般名で記載された処方せんについては、処方医への確認なしに、①含量規格が異なる後発医薬品または②類似する別剤形の後発医薬品-に変更調剤することが可能か。
A.差し支えない。
また、厚生労働省の疑義解釈資料には次のように書かれています。
(問2) 処方せんに含量規格や剤形に関する変更不可の指示がなく、変更調剤後の薬剤料が変更前と同額以下であれば「含量規格が異なる後発医薬品又は類似する別剤形の後発医薬品」に変更できるが、一般名処方に基づいて後発医薬品を調剤する際に、該当する先発医薬品が複数存在し、それぞれ薬価が異なる場合には、変更前の薬剤料についてどのように考えるべきか。
(答) 一般名で記載された先発医薬品に該当していれば、いずれの先発医薬品の薬剤料と比較するものであっても差し支えない。ただし、患者が当該一般名に該当する先発医薬品を既に使用している場合は、当該医薬品の薬剤料と比較すること。
基礎的医薬品の場合
平成28年の薬価改定で基礎的医薬品というカテゴリーができました。基礎的医薬品は後発医薬品ではありませんが、例外的に基礎的医薬品に変更調剤可能な場合があります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
後発医薬品の適応外使用
先発医薬品と後発医薬品で適応症に違いがある場合、変更調剤すると適応外使用となってしまうことがあります。通常、適応外使用はレセプト査定の対象となりますが、変更調剤により適応外使用となってしまうケースについては査定されない可能性が高いです。
なぜならば、厚生労働省保険局長から支払基金理事長宛てに以下の文書が発せられているからです。
先発医薬品と効能効果に違いがある後発医薬品について、一律に査定を行うことは、後発医薬品への変更調剤が進まなくなること、また、それに伴い、医療費が増える可能性があること等を保険者に説明し、影響を理解してもらうよう努めていただきたい。
しかし適応外はあくまで適応外ですから、保険医療のルールに則り、適応外使用と確認できる場合には変更調剤を行わないというのが基本です。