薬剤師による調剤薬局の仕事解説

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基礎的医薬品って何?変更調剤できるの?

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平成28年4月の薬価改定で導入された「基礎的医薬品」を知っていますか?薬局の現場で働いていても、知らない人がほとんどではないかと思います。

実際のところ、基礎的医薬品について知らなくても困ることはほとんどありません。しかし基礎的医薬品には、後発医薬品への変更調剤に関する裏技的なルールがありますので、知っていて良かったと思える場合があるかもしれません。

ここでは基礎的薬品について解説します。



基礎的医薬品とは

基礎的医薬品は平成28年4月の薬価改定で新設された枠組みです。基礎的医薬品について、厚生労働省発表の「医薬品産業強化総合戦略」には次のように記載されています。

(1)基礎的医薬品等の安定供給の確保
長期間にわたり医療現場で使用され、有効性、安全性プロファイルが明確な品目の内、臨床上の必要性が高く将来にわたり継続的に製造販売されることが求められる「基礎的医薬品」については、数次の薬価改定により価格水準が相対的に低くなっているものもあり、今後更に過度の価格下落が続けば、市場への継続的な供給を行うことが困難となることも予想される。質の高い効率的な医療を実現するという観点から、このような基礎的医薬品について、継続的な安定供給を確保するために薬価上の措置を講ずることを検討する。

①「基礎的医薬品」の安定供給のための薬価上の措置
・ 例えば、長期間にわたり薬価収載されており、累次に渡る薬価改定を受けているものの内、医療現場の要望があるため、供給停止もままならないような医薬品については、継続的な市場への安定供給を確保する必要がある。このため、最低薬価では供給の維持(製造設備の改修を含む)が困難な品目や以前に不採算品再算定を受けた品目も含め、基礎的医薬品の要件を明確にした上で、薬価上必要な措置などについて検討を行う。

②安価な医薬品の使用促進
・ 医療の質を落とすことなく、患者の負担を軽くし、医療保険財政の改善に資するという観点から、後発医薬品に限らず、安価で質の高い効率的な医療に資する医薬品の使用促進のあり方について検討する。

基礎的医薬品は「臨床上の必要性が高く安定供給が求められる一方で、薬価改定により薬価が下落することで安定供給が危ぶまれる品目については、安定供給ができる程度の薬価を維持しましょう」という制度です。

具体的に基礎的医薬品の薬価をいくらに設定するかについては

最も販売額が大きい銘柄に価格を集約してその薬価を維持する。

ということで、薬価が一番高い品目に合わせることになりました。基礎的医薬品のリストはこちらで公開されています。全部で617品目あります。

薬価に関してイメージが湧きにくいかもしれないので、実際の例をあげて見てみましょう。基礎的医薬品の対象となったケフラールカプセル250mgを例にあげます。

平成28年4月の薬価改定前、ケフラールカプセル250mg(先発医薬品)にはいくつかの後発医薬品が存在しました。医薬品名と改定前薬価の一覧を以下に示します。(経過措置終了品目は除く)

医薬品名 薬価 先発/後発
ケフラールカプセル250mg 53.70 先発品
トキクロルカプセル250mg 22.60 後発品
セファクロルカプセル250mg「TCK」 22.60 後発品
セファクロルカプセル250mg「トーワ」 22.60 後発品
セファクロルカプセル250mg「日医工」 22.60 後発品
セファクロルカプセル250mg「JG」 22.60 後発品
セファクロルカプセル250mg「SN」 28.20 後発品
セファクロルカプセル250mg「サワイ」 22.60 後発品
先発品のケフラールカプセルの薬価が53.7円で、後発品は28.2円と22.6円の2価格帯に分かれていました。

上記8品目はすべて平成28年4月の薬価改定で基礎的医薬品の対象となりました。薬価改定後の薬価一覧を以下に示します。

医薬品名 薬価 先発/後発
ケフラールカプセル250mg 53.70
トキクロルカプセル250mg 53.70
セファクロルカプセル250mg「TCK」 53.70
セファクロルカプセル250mg「トーワ」 53.70
セファクロルカプセル250mg「日医工」 53.70
セファクロルカプセル250mg「JG」 53.70
セファクロルカプセル250mg「SN」 53.70
セファクロルカプセル250mg「サワイ」 53.70
基礎的医薬品の薬価は「最も販売額が大きい銘柄に価格を集約」ですから、8品目すべて、ケフラールカプセルの改定前薬価と同価格である53.7円に集約されました。

改定前はケフラールカプセルが先発品、その他7品目が後発品でしたが、改定後は8品目すべて「基礎的医薬品」というカテゴリーになり、先発品でも後発品でもなくなりました。


基礎的医薬品へ変更調剤できるか?

上で述べたように、基礎的医薬品は後発医薬品ではありません。したがって原則として基礎的医薬品への変更調剤はできません。しかし例外があります。疑義解釈資料から引用します。

(問1)処方せんにおいて変更不可とされていない処方薬については、後発医薬品への変更調剤は認められているが、基礎的医薬品への変更調剤は行うことができるか。

(答)基礎的医薬品であって、平成28年3月31日まで変更調剤が認められていたもの(「診療報酬における加算等の算定対象となる後発医薬品」等)については、従来と同様に変更調剤を行うことができる。
なお、その際にも「処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について」(平成24年3月5日付け保医発0305第12号)に引き続き留意すること。

引用のとおり、基礎的医薬品のうち平成28年3月31日まで後発医薬品だった品目については変更調剤が可能です。

たとえば、ケフラールカプセル250mgをセファクロルカプセル250mg「TCK」に変更調剤することができます。

基礎的医薬品のうち平成28年3月31日まで後発医薬品だった品目の一覧を以下に示します。97品目あります。

医薬品名 規格
L-キサール顆粒500 500mg1g
MSツワイスロンカプセル10mg 10mg1カプセル
MSツワイスロンカプセル30mg 30mg1カプセル
MSツワイスロンカプセル60mg 60mg1カプセル
アクメイン注 200mL1袋
アスゾール錠250mg 250mg1錠
アステマリン3号MG輸液 500mL1瓶
アルベカシン硫酸塩注射液100mg「HK」 100mg2mL1管
アルベカシン硫酸塩注射液100mg「テバ」 100mg2mL1管
アルベカシン硫酸塩注射液200mg「HK」 200mg4mL1管
アルベカシン硫酸塩注射液200mg「テバ」 200mg4mL1管
アルベカシン硫酸塩注射液25mg「HK」 25mg0.5mL1管
アルベカシン硫酸塩注射液25mg「テバ」 25mg0.5mL1管
アルベカシン硫酸塩注射液75mg「HK」 75mg1.5mL1管
アルベカシン硫酸塩注射液75mg「テバ」 75mg1.5mL1管
セファクロルカプセル250mg「JG」 250mg1カプセル
セファクロルカプセル250mg「SN」 250mg1カプセル
セファクロルカプセル250mg「TCK」 250mg1カプセル
セファクロルカプセル250mg「サワイ」 250mg1カプセル
セファクロルカプセル250mg「トーワ」 250mg1カプセル
セファクロルカプセル250mg「日医工」 250mg1カプセル
セファクロル細粒小児用10%「JG」 100mg1g
セファクロル細粒小児用10%「サワイ」 100mg1g
セファレキシンカプセル250mg「トーワ」 250mg1カプセル
セフィーナ細粒100 100mg1g
セフィーナ細粒50 50mg1g
センセファリンカプセル125 125mg1カプセル
センセファリンシロップ用細粒10% 100mg1g
センセファリンシロップ用細粒20% 200mg1g
ソリューゲンG注 300mL1袋
ソリューゲンG注 200mL1袋
ソルアセトD輸液 250mL1袋
ソルアセトD輸液 200mL1袋
ソルデム3PG輸液 500mL1袋
ソルデム3PG輸液 200mL1袋
ソルデム3輸液 500mL1袋
ソルデム3輸液 200mL1袋
ソルデム6輸液 500mL1袋
ソルデム6輸液 200mL1袋
ソルラクトD輸液 500mL1袋
ソルラクトD輸液 250mL1袋
ソルラクトS輸液 500mL1袋
ソルラクトS輸液 250mL1袋
チニダゾール錠200mg「F」 200mg1錠
チニダゾール錠500mg「F」 500mg1錠
デノサリン1輸液 500mL1袋
デノサリン1輸液 200mL1袋
トキクロルカプセル250mg 250mg1カプセル
ニソリ・S注 500mL1瓶
ハリゾンシロップ100mg/mL 100mg1mL
ハリゾン錠100mg 100mg1錠
ハルトマンD液「小林」 500mL1瓶
ビダラビン点滴静注用300mg「F」 300mg1瓶
ピペユンシン注射用1g 1g1瓶
ピペユンシン注射用2g 2g1瓶
ピペラシリンNa注射用1g「SN」 1g1瓶
ピペラシリンNa注射用1g「サワイ」 1g1瓶
ピペラシリンNa注射用1g「テバ」 1g1瓶
ピペラシリンNa注射用2g「SN」 2g1瓶
ピペラシリンNa注射用2g「サワイ」 2g1瓶
ピペラシリンNa注射用2g「テバ」 2g1瓶
ピペラシリンNa注用1g「トーワ」 1g1瓶
ピペラシリンNa注用2g「トーワ」 2g1瓶
フルクトラクト注 200mL1袋
フルクトラクト注 500mL1袋
ペロール注 300mL1瓶
ペロール注 300mL1袋
ホスホマイシンNa静注用0.5g「タカタ」 500mg1瓶
ホスホマイシンNa静注用1g「NP」 1g1瓶
ホスホマイシンNa静注用1g「タカタ」 1g1瓶
ホスホマイシンNa静注用2g「NP」 2g1瓶
ホスホマイシンNa静注用2g「タカタ」 2g1瓶
ホスホマイシンカルシウムカプセル250mg「日医工」 250mg1カプセル
ホスホマイシンカルシウムカプセル500mg「日医工」 500mg1カプセル
ホスホミンドライシロップ400 400mg1g
ホスマイカプセル250mg 250mg1カプセル
ホスマイカプセル500mg 500mg1カプセル
ミノサイクリン塩酸塩顆粒2%「サワイ」 20mg1g
ラクテックD輸液 500mL1袋
ラクテックG輸液 500mL1袋
ラクテックG輸液 250mL1袋
ラクテックG輸液 1L1袋
ラクトリンゲルS注「フソー」 200mL1瓶
ラクトリンゲルS注「フソー」 500mL1瓶
ラクトリンゲルS注「フソー」 500mL1袋
ラクトリンゲルS注「フソー」 200mL1袋
ラリキシンドライシロップ小児用10% 100mg1g
ラリキシンドライシロップ小児用20% 200mg1g
ラリキシン錠250mg 250mg1錠
リナセート輸液 200mL1袋
リナセート輸液 200mL1瓶
リュウアト1%眼軟膏 1%1g
ワイドシリン細粒20% 200mg1g
注射用ビクシリンS100 (100mg)1瓶
注射用ビクシリンS1000 (1g)1瓶
注射用ビクシリンS500 (500mg)1瓶
日点アトロピン点眼液1% 1%5mL1瓶
薬局では注射薬はほとんど扱いませんので、上の表から注射薬を削除した表を以下に示します。36品目あります。
医薬品名 規格
L-キサール顆粒500 500mg1g
MSツワイスロンカプセル10mg 10mg1カプセル
MSツワイスロンカプセル30mg 30mg1カプセル
MSツワイスロンカプセル60mg 60mg1カプセル
アスゾール錠250mg 250mg1錠
セファクロルカプセル250mg「JG」 250mg1カプセル
セファクロルカプセル250mg「SN」 250mg1カプセル
セファクロルカプセル250mg「TCK」 250mg1カプセル
セファクロルカプセル250mg「サワイ」 250mg1カプセル
セファクロルカプセル250mg「トーワ」 250mg1カプセル
セファクロルカプセル250mg「日医工」 250mg1カプセル
セファクロル細粒小児用10%「JG」 100mg1g
セファクロル細粒小児用10%「サワイ」 100mg1g
セファレキシンカプセル250mg「トーワ」 250mg1カプセル
セフィーナ細粒100 100mg1g
セフィーナ細粒50 50mg1g
センセファリンカプセル125 125mg1カプセル
センセファリンシロップ用細粒10% 100mg1g
センセファリンシロップ用細粒20% 200mg1g
チニダゾール錠200mg「F」 200mg1錠
チニダゾール錠500mg「F」 500mg1錠
トキクロルカプセル250mg 250mg1カプセル
ハリゾンシロップ100mg/mL 100mg1mL
ハリゾン錠100mg 100mg1錠
ホスホマイシンカルシウムカプセル250mg「日医工」 250mg1カプセル
ホスホマイシンカルシウムカプセル500mg「日医工」 500mg1カプセル
ホスホミンドライシロップ400 400mg1g
ホスマイカプセル250mg 250mg1カプセル
ホスマイカプセル500mg 500mg1カプセル
ミノサイクリン塩酸塩顆粒2%「サワイ」 20mg1g
ラリキシンドライシロップ小児用10% 100mg1g
ラリキシンドライシロップ小児用20% 200mg1g
ラリキシン錠250mg 250mg1錠
リュウアト1%眼軟膏 1%1g
ワイドシリン細粒20% 200mg1g
日点アトロピン点眼液1% 1%5mL1瓶
この表に載っている品目については変更調剤可能です。医薬品の在庫がないとき、この表を知っていたおかげで変更調剤ができるということがあるかもしれません。

表を覚える必要はありませんが、こんな表が存在するということを覚えておくと役立つかもしれません。



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