突然ですが、みなさんはバルトレックスの適応症をご存知でしょうか?
私が新人薬剤師のころに、口唇ヘルペスに対するバルトレックスの用法用量を知りたくて添付文書を読んだときのことです。添付文書のどこにも「口唇ヘルペス」と書かれておらず、私は驚きました。
もちろん「単純疱疹」という適応症はあったのですが、不勉強な私は単純疱疹が口唇ヘルペスのことだとわからなかったのです。
このような新人時代の私でも理解できるよう、この記事では単純疱疹、帯状疱疹の違いについて解説します。
バルトレックスの添付文書を見てみよう
単純疱疹、帯状疱疹の違いについての解説を始める前に、バルトレックスの添付文書を見てみましょう。おそらく私の新人時代とは内容が異なっていると思いますが、現在の適応症は次の5つです。
- 単純疱疹
- 造血幹細胞移植における単純ヘルペスウイルス感染症(単純疱疹)の発症抑制
- 帯状疱疹
- 水痘
- 性器ヘルペスの再発抑制
これら5つのうち帯状疱疹と水痘は水痘・帯状疱疹ウイルスによるもので、他の3つは単純ヘルペスウイルスによるものです。
単純ヘルペスウイルスの解説
単純ヘルペスウイルスについて解説します。
単純ヘルペスウイルスには1型と2型の2種類があります。1型は口唇ヘルペスやヘルペス性角膜炎、2型は性器ヘルペスの原因となることが多いです。
皮膚に生じる単純ヘルペスウイルス感染症を単純疱疹といいます。単純疱疹は再発することが多いのが特徴です。疲労、心労、加齢などに伴いウイルスが増殖し再発します。
バルトレックスが、
- 性器ヘルペスの再発抑制
という適応症を持っていることからも、単純疱疹が再発しやすいということが分かるでしょう。
水痘・帯状疱疹ウイルスの解説
水痘・帯状疱疹ウイルスについて解説します。水痘・帯状疱疹ウイルスはその名の通り、水痘、帯状疱疹の原因となるウイルスです。
初感染時に水痘を引き起こします。水痘は別名、水疱瘡(みずぼうそう)とも呼ばれます。水痘治癒後の非活動期はヒト体内に潜伏し、何らかの原因で免疫力が低下するとウイルスが再び活性化し、帯状疱疹を引き起こします。
つまり、帯状疱疹は潜伏感染している水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化が原因であって、他人から感染して発症するものではありません。
また、帯状疱疹は単純疱疹と異なり、再発を繰り返すものではなく、二度以上帯状疱疹に罹患する人はまれです。しかしながら免疫抑制剤を使用するなど、免疫機能が低下している場合には、短期間に何度も再発することがあります。
単純疱疹と帯状疱疹の違いついてまとめ
単純疱疹
単純疱疹は単純疱疹ウイルスによって引き起こされる感染症で、口唇ヘルペス、性器ヘルペス、ヘルペス性角膜炎などがこれに含まれます。
単純疱疹は再発しやすいのが特徴で、治癒後もウイルスは体内にしており免疫力が低下したときなどに再び増殖し再発します。
帯状疱疹
帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染時に生じるのは水痘(別名みずぼうそう)で、免疫力低下時などに再発し、帯状疱疹が生じます。
帯状疱疹はふつう再発せず、一生のうちに罹患するのは一度きりです。しかし、免疫抑制剤などを使用している場合には再発することがあります。