薬剤師による調剤薬局の仕事解説

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特定薬剤(ハイリスク薬)管理指導加算の算定要件と服薬指導について解説

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みなさんの薬局は特定薬剤管理指導加算を算定しているでしょうか?ベタ取りしている、一切算定していないなど薬局により方針が大きく異なる加算ではないかと思います。

また、算定していても、細かい算定要件を把握していない方が多いのではないでしょうか。点数はたかが10点ですが、求められる要件は意外にハードルが高いです。指導内容が要件を満たさず、不適切算定となっているケースがかなり多いのではないかと予想します。

ここでは、特定薬剤管理指導加算について解説します。適正算定のための知識をすべて記載していますので、参考にしてください。



特定薬剤管理指導加算とは何か

まず初めに特定薬剤管理指導加算とは何か、調剤報酬点数表には次のように記載されています。

特に安全管理が必要な医薬品として別に厚生労働大臣が定めるものを調剤した場合であって、当該医薬品の服用に関し、その服用状況、副作用の有無等について患者に確認し、必要な薬学的管理及び指導を行ったときには、10点を所定点数に加算する。

「特に安全管理が必要な医薬品として別に厚生労働大臣が定めるもの」をこの業界では「ハイリスク薬」と呼びます。ハイリスク薬を調剤し服薬指導を行うと10点算定できる、というのが特定薬剤管理指導加算です。

これだけ読むと簡単な算定要件だと思えるかもしれませんが、そんなことはありません。具体的にどう難しいかは後述します。

ハイリスク薬の一覧

特定薬剤管理指導加算の算定要件の難しさを説明する前に、ハイリスク薬について解説しておきます。

ハイリスク薬について、調剤報酬点数表に関する事項には次のように記載されています。

特に安全管理が必要な医薬品とは、抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、不整脈用剤、抗てんかん剤、血液凝固阻止剤、ジギタリス製剤、テオフィリン製剤、カリウム製剤(注射薬に限る。)、精神神経用剤、糖尿病用剤、膵臓ホルモン剤及び抗HIV薬をいう。なお、具体的な対象薬剤については、その一覧を厚生労働省のホームページに掲載している。

ハイリスク薬の一覧は厚生労働省保険局が運営するホームページ、診療報酬情報提供サービス上で公開されています。

3,000以上の品目がハイリスク薬として指定されていますので、ここに一覧を載せることはできません。上記のページで確認してください。

特定薬剤管理指導加算の算定要件

では、特定薬剤管理指導加算がどれだけ難しい算定要件なのか見ていきましょう。

特定薬剤管理指導加算について、調剤報酬点数表に関する事項には次のように記載されています。

(28) 特定薬剤管理指導加算
ア 特定薬剤管理指導加算(「注5」に規定する加算をいう。以下同じ。)は、薬剤服用歴管理指導料を算定するに当たって行った薬剤の管理及び指導等に加えて、患者又はその家族等に当該薬剤が特に安全管理が必要な医薬品である旨を伝え、当該薬剤についてこれまでの指導内容等も踏まえ適切な指導を行った場合に算定する。なお、「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」(日本薬剤師会)等を参照し、特に安全管理が必要な医薬品に関して薬学的管理及び指導等を行う上で必要な情報については事前に情報を収集することが望ましいが、薬局では得ることが困難な診療上の情報の収集については必ずしも必要とはしない。

イ 特に安全管理が必要な医薬品とは、抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤、不整脈用剤、抗てんかん剤、血液凝固阻止剤、ジギタリス製剤、テオフィリン製剤、カリウム製剤(注射薬に限る。)、精神神経用剤、糖尿病用剤、膵臓ホルモン剤及び抗HIV薬をいう。なお、具体的な対象薬剤については、その一覧を厚生労働省のホームページに掲載している。

特に安全管理が必要な医薬品が複数処方されている場合には、その全てについて必要な薬学的管理及び指導を行うこと。ただし、処方せんの受付1回につき1回に限り算定するものであること。

エ 対象となる医薬品に関して患者又はその家族等に対して確認した内容及び行った指導の要点について、薬剤服用歴の記録に記載すること。なお、従来と同一の処方内容にもかかわらず当該加算を継続して算定する場合には、特に指導が必要な内容を重点的に行い、その内容を薬剤服用歴の記録に記載すること。

重要な部分を赤文字にしています。つまり、特定薬剤管理指導加算の算定において重要なのは次の2点です。

  • 「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」を参照しなさい。
  • 処方されたすべてのハイリスク薬について指導を行いなさい。

日本薬剤会が発表している「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」には、ハイリスク薬が処方された患者にどういった指導をすればよいかが記載されています。

「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」を参照しなさい、ということは「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」に沿った内容で服薬指導を行い、薬歴を記載しなさいということです。

実際に個別指導では「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」に沿った内容で薬歴が記載されているかがチェックされます。

したがって、「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」に沿った服薬指導を行うことが特定薬剤管理指導加算の算定要件であり、これこそが高いハードルなのです。


「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」

「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」は日本薬剤師会のホームページで公開されています。

ここからは、「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」でハイリスク薬の服薬指導についてどのように記載されているかを紹介します。ハイリスク薬の薬学的管理指導において特に注意すべき事項が列挙されています。

まず、すべてのハイリスク薬に共通する指導事項が5つ記載されています。共通する5項目は次の通りです。

共通する5項目
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認(飲み忘れ時の対応を含む)
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認

共通する5項目が、ハイリスク薬の服薬指導の基本です。個別指導では、薬歴に共通する5項目が記載されているかがチェックされます。

次に各ハイリスク薬の指導事項を紹介します。共通する5項目を基本とし、その他各薬効群に対応した確認項目が追加されています。

(1) 抗悪性腫瘍剤
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量、投与期間、休薬期間等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認(化学療法に対する不安への対応、外来化学療法実施の際に受けた指導内容や提供された情報の確認)
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認
6) 患者に最適な疼痛緩和のための情報収集、処方提案と患者への説明、麻薬の使用確認
7) 支持療法の処方・使用の確認あるいは必要に応じた支持療法の提案等

(2) 免疫抑制剤
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量、投与期間、休薬期間等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認(感染症の発症や悪化防止のための注意事項の患者への説明)
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(感染症の発症等)
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及びグレープフルーツジュース等の飲食物や食事との相互作用の確認

(3) 不整脈用剤
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認
3) 副作用モニタリング(ふらつき、動悸、低血糖等の症状)及び重篤な副作用(催不整脈等)発生時の対処方法の教育
4) 効果の確認(最近の発作状況を聞き取り、適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、QT延長を起こしやすい薬剤等、併用薬及び食事との相互作用の確認

(4) 抗てんかん剤
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育
4) 効果の確認(最近の発作状況を聞き取り、適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認

(5) 血液凝固阻止剤
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認、服薬管理の徹底(検査・手術前・抜歯時の服薬休止、検査・手術後・抜歯後の服薬再開の確認)
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(服用中は出血傾向となるので、過量投与の兆候(あざ、歯茎からの出血等)の確認とその対策)
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事(納豆等)との相互作用の確認
6) 日常生活(閉経前の女性に対する生理中の生活指導等)での注意点の指導

(6) ジギタリス製剤
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(特にジギタリス中毒症状(食欲不振、悪心・嘔吐、めまい、頭痛、不整脈)の発現の確認とその対策)
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、K排泄型利尿薬やCa含有製剤、β遮断薬等、併用薬及び食事との相互作用の確認

(7) テオフィリン製剤
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(悪心、嘔吐、けいれん、頻脈等の過量服用に伴う副作用症状について説明とモニタリング)
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認(喫煙、カフェイン摂取等の嗜好歴)
6) 小児、特に乳幼児では、副作用防止のため発熱時の対応について指導

(8) 精神神経用剤
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服薬に対する意識が低い患者及び患者家族への教育とアドヒアランスの向上
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育
(ア) 原疾患の症状と類似した副作用(錐体外路症状、パーキンソン症候群等)
(イ) 致死的副作用(悪性症候群、セロトニン症候群等)
(ウ) 非定型抗精神病薬による、血液疾患、内分泌疾患等
(エ) 転倒に関する注意喚起
4) 薬物の依存傾向を示す患者等に対して、治療開始時における適正な薬物療法に関する情報を提供
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認
6) 自殺企図等による過量服薬の危険性のある患者の把握と服薬管理の徹底
●自殺のサイン(自殺予防の十箇条) 「自殺総合対策大綱の概要」(パンフレット)より
(次のようなサインを数多く認める場合は、自殺の危険が迫っています。)
1. うつ病の症状に気をつけよう (気分が沈む、自分を責める、仕事の能率が落ちる、決断できない、不眠が続く)
2. 原因不明の身体の不調が長引く
3. 酒量が増す
4. 安全や健康が保てない
5. 仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う
6. 職場や家庭でサポートが得られない
7. 本人にとって価値あるもの(職、地位、家族、財産)を失う
8. 重症の身体の病気にかかる
9. 自殺を口にする
10. 自殺未遂におよぶ

(9) 糖尿病用剤
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認(Sick Day 時の対処法についての指導)
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(低血糖及び低血糖状態出現時の自覚症状とその対処法の指導)
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値(HbA1c や血糖値)のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認
6) 注射手技の確認(薬剤の保管方法、空打ちの意義、投与部位等)、注射針の取り扱い方法についての指導

(10)膵臓ホルモン剤
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認(Sick Day 時の対処法についての指導)
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(低血糖及び低血糖状態出現時の自覚症状とその対処法の指導)
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値(HbA1c や血糖値)のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認
6) 注射手技の確認(薬剤の保管方法、空打ちの意義、投与部位等)、注射針の取り扱い方法についての指導

(11)抗HIV剤
1) 患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2) 服用患者のアドヒアランスの確認(服用する回数や時間がライフスタイルと合致しているかの確認、アドヒアランス低下による薬剤耐性HIV出現のリスクについての説明)
3) 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(重大な副作用の発見のため、発熱、発疹等の初期症状について指導し、体調変化の有無について確認)
4) 効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5) 一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認

特定薬剤管理指導加算を算定するためには「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン」に沿った内容の指導を行い、薬歴にその記録を残さなければなりません。

実際の薬歴記入例

特定薬剤管理指導加算を算定した場合、どのように薬歴を記載すれば良いか実際に示します。

処方例1

<処方例1>
アマリール錠1mg 1錠
分1 朝食後 30日分
処方例1は糖尿病用剤の処方です。薬歴には例えば次のように記載すれば良いです。
<薬歴例1-1>
アマリール処方内容を確認。承認された用法用量の通りであり問題なし。禁忌、慎重投与への該当なし。アマリール錠1mg1日1回朝食後1錠の服用です。アマリールは特に安全管理が必要な医薬品です。処方された通りに服用することが大切です。飲み忘れがある、朝食を摂らないなどがあれば必ず病院、薬局でご相談ください。
<薬歴例1-2>
アマリール副作用について指導。アマリールの副作用により低血糖が起こることがあります。低血糖では冷や汗、ふるえ、動悸などの症状が現れます。低血糖を放置すると命に関わる場合があります。したがって低血糖症状があれば、糖を摂取し血糖値を高めることが大切です。ジュース、チョコレートなど砂糖を含む飲食物を摂取し、低血糖からの回復を図ってください。
1回の薬歴で共通する5項目をすべて網羅する必要はありません。複数回の薬歴で共通する5項目を網羅できていれば問題ありません。(個別指導において、1回の薬歴で共通する5項目をすべて網羅しなければならない、と指導されることがあるようです。その場合、その指導に従うほかありません。)

処方例2

<処方例2>
アマリール錠1mg 1錠
ジャヌビア錠50mg 1錠
分1 朝食後 30日分
処方例2は糖尿病用剤が2種類処方されています。この場合、薬歴には例えば次のように記載すれば良いです。
<薬歴例2-1>
アマリール、ジャヌビア処方内容を確認。承認された用法用量の通りであり問題なし。禁忌、慎重投与への該当なし。アマリール錠1mg1日1回朝食後1錠、ジャヌビア錠50mg1日1回朝食後1錠の服用です。アマリール、ジャヌビアはともに特に安全管理が必要な医薬品です。処方された通りに服用することが大切です。飲み忘れがある、朝食を摂らないなどがあれば必ず病院、薬局でご相談ください。
<薬歴例2-2>
アマリール、ジャヌビア副作用について指導。アマリール、ジャヌビアの副作用により低血糖が起こることがあります。低血糖では冷や汗、ふるえ、動悸などの症状が現れます。低血糖を放置すると命に関わる場合があります。したがって低血糖症状があれば、糖を摂取し血糖値を高めることが大切です。ジュース、チョコレートなど砂糖を含む飲食物を摂取し、低血糖からの回復を図ってください。
ハイリスク薬が複数処方されている場合、すべてのハイリスク薬について共通する5項目を薬歴に記載しなければなりません。ただし、複数のハイリスク薬に共通する副作用について指導する場合は、薬歴例2-2のようにまとめて記載しても構いません。

1種類、2種類であれば服薬指導、薬歴記載をすることは可能だと思います。しかし、4種類、5種類のハイリスク薬が処方されている場合、それらすべてについて共通する5項目を服薬指導し、薬歴記載するのは実務上、かなり難しいと思われます。

したがって4種類、5種類のハイリスク薬が処方されているにも関わらず、特定薬剤管理指導加算が毎回算定されている場合、不適切算定が強く疑われます。薬歴にはすべてのハイリスク薬について共通する5項目がきちんと記載してあっても「本当に毎回この内容すべてを指導していますか?これだけの内容を説明するだけで10分くらいかかるのではないですか?」と個別指導でツッコまれることになります。

処方例3

<処方例3>
アーチスト錠2.5mg 2錠
分2 朝夕食後 30日分
処方例3では特定薬剤管理指導加算を算定できません。

アーチスト錠はハイリスク薬の一覧に記載されている医薬品ですが、それは不整脈用剤として、です。アーチスト錠は複数の効能効果があり、処方例3は慢性心不全に対する用法用量です。不整脈用剤としての処方でない場合、特定薬剤管理指導加算を算定することはできません。

これについては以下の日本薬剤師会Q&Aを参照してください。

Q.複数の適応を有する医薬品であって、特定薬剤管理指導加算の対象範囲とされている適応以外の目的で使用されている場合であっても、同加算は算定可能であると理解してよいのか。

A.特定薬剤管理指導加算の対象範囲以外の目的で使用されている場合には、同加算の算定は認められない。

実際には、副作用軽減を目的として抗不整脈目的で処方例3が処方されるケースはあり得ると思います。その場合は疑義照会を行い、「副作用軽減のため、適応外の用法だが抗不整脈目的である」ということを確認した上で特定薬剤管理指導加算を算定しなければ、辻褄が合いません。

ハイリスク薬以外の指導

特定薬剤管理指導加算を算定すると、薬歴がハイリスク薬に関する指導だけになってしまうことがあります。ハイリスク薬について薬歴を書かなければという気持ちが強いためですが、これは不適切です。薬剤服用歴管理指導料を算定している以上、ハイリスク薬以外の医薬品についても指導を行わなければなりません。

特定薬剤管理指導加算を算定した場合に薬歴に記載しなければならないことは、薬剤服用歴管理指導料の算定要件を満たした記載、プラス、ハイリスク薬に関する共通する5項目の記載です。

まとめ

いかがだったでしょうか?特定薬剤管理指導加算の算定要件のハードルの高さを理解していただけたと思います。

特定薬剤管理指導加算をベタ取りしていても、レセプトで返戻になることはありません。レセプトでは服薬指導や薬歴の内容はチェックされないからです。だからといって、ベタ取りは明らかに不適切運用です。

その一方で、特定薬剤管理指導加算を一切算定しないのも不適切だと個人的には思います。必要性があって特定薬剤管理指導加算という点数が設定されているわけですから、特定薬剤管理指導加算を算定できるような服薬指導になるよう努力が必要だと思いますし、特定薬剤管理指導加算の算定要件を満たした場合にはきちんと算定すべきだと思います。

したがって、特定薬剤管理指導加算の算定に関して何かしらのルールを自主的に作り、そのルールにしたがって算定を行うというのが現実的な対応策と考えます。



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