薬剤師による調剤薬局の仕事解説

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脂肪、脂質、脂肪酸、中性脂肪、コレステロールの違いについて解説

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中性脂肪、コレステロールが高い状態を脂質異常症と言いますが、中性脂肪、コレステロールは何がどう違うのかご存知でしょうか?

また似たような言葉に脂肪、脂肪酸などがありますが、これらの言葉を正しく使い分けができているでしょうか?

この記事ではこれらの混同しがちな言葉について、その違いを解説します。



コレステロールとは何か?

定義がきちんと定まっているものから見ていきます。まずはコレステロールです。

コレステロールは有機化合物の一種です。何かの総称などではなく、単一の化合物を指します。例えばLDLコレステロールは、リポタンパク質の一種であるLDLとコレステロールの複合体を指しており、LDLコレステロールという種類のコレステロールが存在するわけではありません。

コレステロールは細胞膜の構成成分であるなど、生命維持に必須の分子です。

脂肪酸とは何か?

脂肪酸とは長鎖炭化水素の1価のカルボン酸です。つまり炭素鎖の端に-COOH基が結合したものです。炭素鎖の中に二重結合がひとつもないものを飽和脂肪酸、ひとつでもあるものを不飽和脂肪酸と呼びます。

飽和脂肪酸にはパルミチン酸、ステアリン酸などがあり、不飽和脂肪酸にはリノール酸、オレイン酸などがあります。

脂肪酸とグリセリンがエステル結合したものを中性脂肪と呼びます。

中性脂肪とは何か?

上で述べたとおり、脂肪酸とグリセリンがエステル結合したものを中性脂肪と呼びます。

中性脂肪はグリセリンの-OH基と脂肪酸の-COOH基がエステル結合することで生じますが、グリセリンには-OH基が3つあるので、最大3つの脂肪酸と結合することができます。エステル結合の数により、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドと呼ばれます。

血液中に含まれる中性脂肪のほとんどはトリグリセリドなので、トリグリセリドのことを指して中性脂肪と呼ぶこともあります。

したがって、中性脂肪の定義は文脈により変化します。


脂質とは何か?

脂質とは生物から単離される水に溶けない物質の総称ですが、数多くの例外が存在するため、厳密に定義するのは難しいです。

脂肪酸、中性脂肪、コレステロールは脂質の一種であり、他にはワックス、リン脂質、糖脂質、リポタンパク質などが含まれます。

脂肪とは何か?

脂肪とは栄養素の一つであり、栄養学的には脂質と同義ですが、厳密に定義されずに使われていることが多いです。

食事中の脂肪と言うときには油脂やその成分である脂肪酸を意味し、生体の脂肪と言うときには蓄積された中性脂肪を意味するのが一般的と思われます。

まとめ

この記事では脂肪、脂質、脂肪酸、中性脂肪、コレステロールの違いについて解説しました。

混同しやすい言葉なので、患者に対して間違った情報を伝えることのないよう、意識して使い分けをする必要があります。



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