薬剤師による調剤薬局の仕事解説

事務仕事から人材育成まで、調剤薬局の仕事すべてを管理薬剤師が解説します。

かかりつけ薬剤師の要件は何?

f:id:chouzai:20170705013309j:plain
平成28年調剤報酬改定により、かかりつけ薬剤師制度が新設されました。かかりつけ薬剤師として患者からの指名を得ると、患者との信頼関係が深まりますし、長期的にその患者の治療をサポートしやすくなります。

多くの薬剤師がかかりつけ薬剤師として活躍することが望まれているのですが、薬剤師であれば誰でもかかりつけ薬剤師になれるわけではありません。かかりつけ薬剤師として活動するには一定の基準を満たす必要があります。

ここではかかりつけ薬剤師になるための要件について解説します。



かかりつけ薬剤師の要件とは

かかりつけ薬剤師になるためには以下の施設基準を満たすことが必要です。

[施設基準]
以下の要件を全て満たす保険薬剤師を配置していること。
(1) 以下の経験等を全て満たしていること。
ア 施設基準の届出時点において、保険薬剤師として3年以上の薬局勤務経験があること。
イ 当該保険薬局に週32時間以上勤務していること。
ウ 施設基準の届出時点において、当該保険薬局に6月以上在籍していること。
(2) 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得していること。(当該規定は、平成29年4月1日から施行)
(3) 医療に係る地域活動の取組に参画していること。

上記の施設基準をひとつずつ見ていきましょう。

薬剤師としての経験

かかりつけ薬剤師になるためには、薬局薬剤師としての一定の経験が必要です。まず、3年以上の薬局勤務経験が必要ですから新人薬剤師はかかりつけ薬剤師になれません。また当該薬局に週32時間以上の勤務が必要ですから、多くのパート薬剤師はかかりつけ薬剤師になれません。

当該薬局に6ヶ月以上在籍していなければなりませんから、経験豊富なベテラン薬剤師であっても当該薬局での勤務経験が少なければかかりつけ薬剤師になれません。

研修認定制度等の研修認定を取得

かかりつけ薬剤師になるためには、研修認定薬剤師として認定を受けなければなりません。研修認定薬剤師としての認定を受ける方法はいくつかあるのですが、最も一般的なのは日本薬剤師研修センターを通して認定を受ける方法です。

日本薬剤師研修センターを通して認定を受けるためには、学会への参加、eラーニングの受講などで獲得できる研修受講シールを一定数集めることが必要です。

地域活動の取り組み

かかりつけ薬剤師になるためには、医療に係る地域活動に取り組んだ実績が必要です。どのような取り組みをすれば「医療に係る地域活動」として認められるかは以下の疑義解釈資料のとおりです。

疑義解釈資料の送付について(その3)
【かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料】

(問1)かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の施設基準である、「医療に係る地域活動の取組に参画していること」について、どのように考えればよいか。

(答)「医療に係る地域活動の取組に参画していること」の要件についての考え方は、次のような活動に主体的・継続的に参画していることである。
・地域包括ケアシステムの構築に向けた、地域住民を含む、地域における総合的なチーム医療・介護の活動であること。
・地域において人のつながりがあり、顔の見える関係が築けるような活動であること。
具体的には、地域における医療・介護等に関する研修会等へ主体的・継続的に参加する事例として以下のようなことが考えられる。
①地域ケア会議など地域で多職種が連携し、定期的に継続して行われている医療
・介護に関する会議への主体的・継続的な参加
②地域の行政機関や医療・介護関係団体等(都道府県や郡市町村の医師会、歯科医師会及び薬剤師会並びに地域住民に対して研修会等サービスを提供しているその他の団体等)が主催する住民への研修会等への主体的・継続的な参加


(問2)上記の活動のほかに、「医療に係る地域活動の取組に参画していること」に該当するものはあるのか。

(答)本来の地域活動の取組としては、上記のような考え方に基づく活動に薬局の薬剤師として積極的に参画することが求められるが、以下のような事例も当面の間は要件に該当すると考えられる。なお、薬局として対応している場合は、届出に係る薬剤師が関与していることが必要である。
・行政機関や学校等の依頼に基づく医療に係る地域活動(薬と健康の週間、薬物乱用防止活動、注射針の回収など)への主体的・継続的な参画(ただし、薬局内でのポスター掲示や啓発資材の設置のみでは要件を満たしているとはいえない。)
・行政機関や地域医師会、歯科医師会、薬剤師会の協力のもとで実施している休日夜間薬局としての対応、休日夜間診療所への派遣
・委嘱を受けて行う学校薬剤師の業務 等

上記の疑義解釈資料を読んでも、「医療に係る地域活動」ははっきりしません。どのような取り組みをすれば「医療に係る地域活動」として認められるかは都道府県により見解が大きく異なるのが実際のため、ここでひとまとめにして解説することができません。


まとめ

かかりつけ薬剤師の要件について解説しました。「医療に係る地域活動」については大きな議論となり、定義のあいまいさに多くの薬剤師が困惑しています。今後議論が進み、「医療に係る地域活動」についての見解が定まったときには記事を追記しようと思っています。

かかりつけ薬剤師としての活動に消極的な方もいらっしゃると思いますが、個人的には、多くの人にかかりつけ薬剤師として活動して欲しいと願っています。かかりつけ薬剤師としての活動は薬剤師自身の成長にも直結するものです。

かかりつけ薬剤師を推進する薬局はブラックだという意見もあるようですが、私は必ずしもそうではないと思っています。詳しくは以下の記事をご覧ください。





※当サイト上の記載内容に関し、いかなる保証をするものでもありません。当サイト上の記載内容に誤りおよび記載内容に基づいて被った被害については、当サイトは一切責任を負いかねます。