薬剤師による調剤薬局の仕事解説

事務仕事から人材育成まで、調剤薬局の仕事すべてを管理薬剤師が解説します。

12種類ある調剤基本料の完全解説

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2016年4月の診療報酬改定で調剤基本料は12種類に細分化されました。あまりに種類が多いので、すべてをきちんと理解している人は少ないのではないかと思います。ここでは調剤基本料について、誰でも理解できるように分かりやすく解説していきます。



調剤基本料とは何か

調剤基本料とは処方せん受付1回につき1回算定できる点数のことです。調剤基本料を算定可能なケースでは必ず算定しなければいけません。算定可能なケースで算定せずに済ませることは、一部負担金の違法な値引きに当たり、健康保険法と薬担規則に反するため行なってはいけません。(一部負担金がもともとゼロの場合は算定せずに済ませてもセーフです。)条文はこちらで確認してください。

調剤基本料の一覧表

調剤基本料の一覧を以下に示します。

区分 点数 要件
調剤基本料1 41 調剤基本料2~5、特別調剤基本料に該当せず
調剤基本料2 25 規定の受付回数、集中率に該当
調剤基本料3 20 規定のグループ枚数、集中率、賃貸借関係に該当
調剤基本料4 31 調剤基本料1の未妥結減算
調剤基本料5 19 調剤基本料2の未妥結減算
特別調剤基本料 15 調剤基本料3の未妥結減算、または調剤基本料未届
6種類しかないじゃん!12種類じゃないの?と思ったあなた。鋭いです。それについては後で説明します。上の表を見て、調剤基本料は一律ではなく、受付枚数や集中率などで変わってくるということをまずは理解してください。未妥結減算については以下の記事をご覧ください。

調剤基本料3

ではひとつずつ見ていきましょう。簡単のためまずは調剤基本料3からです。調剤基本料3はいわば、大手薬局チェーンが儲けすぎないように設定された区分です。

該当要件は、同一グループの保険薬局の処方せん受付回数の合計が月4万回超のグループに属する保険薬局であり、かつ以下①、②のいずれかに該当する薬局です。
①集中率95%超
②特定の保険医療機関との間で不動産の賃貸借取引がある

平均的な薬局の受付回数がだいたい月1,000回ですから、月4万回超のグループというと該当となるのは数十店舗以上の規模のチェーン薬局です。
①はひとつの医療機関の処方せんばかり受け付けていると該当します。
②は薬局の所有物件に開業医を誘致するようなケースが該当します。

調剤基本料2

調剤基本料2の該当要件は以下の通りです。
調剤基本料3に該当せず、以下①、②、③のいずれかに該当する薬局
①処方せん受付回数月4,000回超かつ集中率70%超
②処方せん受付回数月2,000回超かつ集中率90%超
③特定の保険医療機関からの処方せん受付回数月4,000回超

①、③は大規模病院の門前薬局が当てはまりやすいです。②は小規模病院や個人クリニックの門前薬局でも該当することがあると思います。①、②は集中率の規定がありますから、他医療機関の処方せんを獲得して集中率を下げることで該当から逃れることが可能です。しかし門前薬局で集中率を70%以下にすることはかなり難しいですから、集中率を下げることで①の該当から逃れることは現実的ではありません。

調剤基本料1

上記の調剤基本料2および調剤基本料3に該当しない薬局は調剤基本料1に該当します。また、調剤基本料2および調剤基本料3に該当する薬局であっても、特例除外の条件を満たせば調剤基本料1に該当となります。

8割以上の薬局が基本調剤料1を算定していると思います。また、ほとんどの薬局が調剤基本料1〜3を算定していると思います。

以下で解説する9種類の調剤基本料は、普通に業務を行っていれば該当しない区分です。万が一該当する薬局があれば、早急に業務改善が求められます。

調剤基本料5、特別調剤基本料

調剤基本料2に該当する薬局が「妥結率が低い保険薬局」とみなされると調剤基本料5に該当します。同様に、調剤基本料3に該当する薬局が「妥結率が低い保険薬局」とみなされると特別調剤基本料に該当します。

また、自分の薬局が調剤基本料のどの区分に該当するか、自分で受付回数、集中率などを集計して、地方厚生局に届け出ないといけないのですが、この届出を行わないと自動的に特別調剤基本料に該当となります。

調剤基本料4

調剤基本料1に該当する薬局が「妥結率が低い保険薬局」とみなされると調剤基本料4に該当します。また、調剤基本料5および特別調剤基本料に該当する薬局であっても、特例除外の条件を満たせば調剤基本料4に該当となります。



調剤基本料の50/100減算

ここまで6種類の調剤基本料について解説してきましたが、先に説明した通り、調剤基本料にはあと6種類あります。調剤基本料の50/100減算と呼ばれるもので、かかりつけ薬局の基本的な機能に係る業務を行っていないとみなされると、上記6種類の調剤基本料のそれぞれ50/100減算した点数しか算定できなくなります。表にまとめました。

区分 点数 50/100減算時の点数
調剤基本料1 41 21
調剤基本料2 25 13
調剤基本料3 20 10
調剤基本料4 31 16
調剤基本料5 19 10
特別調剤基本料 15 8

かかりつけ薬局の基本的な機能に係る業務を行っていないとみなされるのは、以下の15項目の合計算定回数が年10回未満の場合です。
・調剤料の時間外等加算
・調剤料の夜間・休日等加算
・薬剤服用歴管理指導料の麻薬管理指導加算
・薬剤服用歴管理指導料の重複投薬・相互作用等防止加算
・かかりつけ薬剤師指導料
・かかりつけ薬剤師包括管理料
・外来服薬支援料
・在宅患者訪問薬剤管理指導料
・在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
・在宅患者緊急時等共同指導料
・退院時共同指導料
・服薬情報等提供料
・在宅患者重複投薬・相互作用等防止加算
・居宅療養管理指導費(介護報酬)
・介護予防居宅療養管理指導費(介護報酬)
夜間・休日等加算は土曜の午後1時以降算定可能なので、土曜午後に開局していれば年10回算定できないということはまずないと思います。重複投薬・相互作用等防止加算は、算定可能な範囲が広がってずいぶん算定しやすくなりました。上記15項目の合計算定回数が年10回未満の薬局は、薬局としての役割を果たしていないので、50/100減算になって当然といえます。

調剤基本料のどの区分に該当するかチェック

12種類の調剤基本料すべてについて見てきましたので、ここであなたの薬局が調剤基本料のどの区分に該当するかをチェックしてみましょう。
質問に従って進んでいくとチェックできるようになっています。

Q1.以下の①、②のいずれかに該当しますか?
①かかりつけ薬局の基本的な機能に係る業務の合計算定回数が年10回以上
②処方せん受付回数が月600回以下
YES→Q2へ進む
NO→Q12へ進む
Q2.「妥結率に係る報告書」を地方厚生局に提出しましたか?
YES→Q3へ進む
NO→Q8へ進む
Q3.妥結率は50%を超えていますか?
YES→Q4へ進む
NO→Q8へ進む
Q4.以下の①、②の両方ともに該当しますか?
①勤務している薬剤師の5割以上がかりつけ薬剤師指導料の施設基準の届出を行っている(常勤換算)
②薬剤師一人あたり月100回以上かかりつけ薬剤師指導料またはかかりつけ薬剤師包括管理料を算定している
YES→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料1」の41点です。
NO→Q5へ進む
Q5.処方せん受付回数の合計が月4万回超のグループに属していますか?
YES→Q6へ進む
NO→Q7へ進む
Q6.以下の①、②のいずれかに該当しますか?
①集中率95%超
②特定の保険医療機関との間で不動産の賃貸借取引がある
YES→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料3」の20点です。
NO→Q7へ進む
Q7.以下の①、②、③のいずれかに該当しますか?
①処方せん受付回数月4,000回超かつ集中率70%超
②処方せん受付回数月2,000回超かつ集中率90%超
③特定の保険医療機関からの処方せん受付回数月4,000回超
YES→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料2」の25点です。
NO→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料1」の41点です。
Q8.以下の①、②の両方ともに該当しますか?
①勤務している薬剤師の5割以上がかりつけ薬剤師指導料の施設基準の届出を行っている(常勤換算)
②薬剤師一人あたり月100回以上かかりつけ薬剤師指導料またはかかりつけ薬剤師包括管理料を算定している
YES→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料4」の31点です。
NO→Q9へ進む
Q9.処方せん受付回数の合計が月4万回超のグループに属していますか?
YES→Q10へ進む
NO→Q11へ進む
Q10.以下の①、②のいずれかに該当しますか?
①集中率95%超
②特定の保険医療機関との間で不動産の賃貸借取引がある
YES→あなたの薬局の調剤基本料は「特別調剤基本料」の15点です。
NO→Q11へ進む
Q11.以下の①、②、③のいずれかに該当しますか?
①処方せん受付回数月4,000回超かつ集中率70%超
②処方せん受付回数月2,000回超かつ集中率90%超
③特定の保険医療機関からの処方せん受付回数月4,000回超
YES→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料5」の19点です。
NO→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料4」の31点です。
Q12.「妥結率に係る報告書」を地方厚生局に提出しましたか?
YES→Q13へ進む
NO→Q18へ進む
Q13.妥結率は50%を超えていますか?
YES→Q14へ進む
NO→Q18へ進む
Q14.以下の①、②の両方ともに該当しますか?
①勤務している薬剤師の5割以上がかりつけ薬剤師指導料の施設基準の届出を行っている(常勤換算)
②薬剤師一人あたり月100回以上かかりつけ薬剤師指導料またはかかりつけ薬剤師包括管理料を算定している
YES→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料1の50/100減算」の21点です。
NO→Q15へ進む
Q15.処方せん受付回数の合計が月4万回超のグループに属していますか?
YES→Q16へ進む
NO→Q17へ進む
Q16.以下の①、②のいずれかに該当しますか?
①集中率95%超
②特定の保険医療機関との間で不動産の賃貸借取引がある
YES→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料3の50/100減算」の10点です。
NO→Q17へ進む
Q17.以下の①、②、③のいずれかに該当しますか?
①処方せん受付回数月4,000回超かつ集中率70%超
②処方せん受付回数月2,000回超かつ集中率90%超
③特定の保険医療機関からの処方せん受付回数月4,000回超
YES→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料2の50/100減算」の13点です。
NO→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料1の50/100減算」の21点です。
Q18.以下の①、②の両方ともに該当しますか?
①勤務している薬剤師の5割以上がかりつけ薬剤師指導料の施設基準の届出を行っている(常勤換算)
②薬剤師一人あたり月100回以上かかりつけ薬剤師指導料またはかかりつけ薬剤師包括管理料を算定している
YES→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料4の50/100減算」の16点です。
NO→Q19へ進む
Q19.処方せん受付回数の合計が月4万回超のグループに属していますか?
YES→Q20へ進む
NO→Q21へ進む
Q20.以下の①、②のいずれかに該当しますか?
①集中率95%超
②特定の保険医療機関との間で不動産の賃貸借取引がある
YES→あなたの薬局の調剤基本料は「特別調剤基本料の50/100減算」の8点です。
NO→Q21へ進む
Q21.以下の①、②、③のいずれかに該当しますか?
①処方せん受付回数月4,000回超かつ集中率70%超
②処方せん受付回数月2,000回超かつ集中率90%超
③特定の保険医療機関からの処方せん受付回数月4,000回超
YES→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料5の50/100減算」の10点です。
NO→あなたの薬局の調剤基本料は「調剤基本料4の50/100減算」の16点です。

調剤基本料が薬局の経営に与える影響

薬局は調剤基本料1を算定するのが普通です。調剤基本料1を算定している薬局が他区分の調剤基本料に該当してしまった場合、薬局の利益にどれくらい影響を与えるか見てみましょう。(受付回数2,000回以下では調剤基本料2、調剤基本料5およびそれらの50/100減算に該当することはありませんが、参考のため記載しています。)

1ヶ月あたりの利益減少額(万円)
区分 点数マイナス 受付回数1,000回/月 受付回数1,500回/月 受付回数2,000回/月
調剤基本料1 0 0 0 0
調剤基本料2 16 16 24 32
調剤基本料3 21 21 31.5 42
調剤基本料4 10 10 15 20
調剤基本料5 22 22 33 44
特別調剤基本料 26 26 39 52
調剤基本料1の50/100減算 20 20 30 40
調剤基本料2の50/100減算 28 28 42 56
調剤基本料3の50/100減算 31 31 46.5 62
調剤基本料4の50/100減算 25 25 37.5 50
調剤基本料5の50/100減算 31 31 46.5 62
特別調剤基本料の50/100減算 33 33 49.5 66
基本調剤料1を算定できなくなることで、月の利益が数十万円の単位で減ってしまうことが分かります。これが薬局経営にどれくらいのインパクトを与えるかは以下の記事を参照していただけるとわかると思います。

基本調剤料1を算定していても営業利益がわずかしかない薬局は多いです。こうした状況で基本調剤料1を算定できなくなることは薬局にとって死活問題と言って間違いないでしょう。

まとめ

12種類の調剤基本料について解説してきましたが、実際には調剤基本料1~3のいずれかを算定している薬局がほとんどだと思います。調剤基本料に点数差があるということは、「調剤基本料1を算定できる薬局」が厚生労働省が求める薬局の姿だということを意味します。調剤基本料2や調剤基本料3に該当するような大型薬局、門前薬局は今後ますます厳しい状況に追い込まれるでしょう。薬局淘汰の時代を生き残っていくために調剤基本料1の算定は必須ですから、かかりつけ薬局としての活動に力を入れ、特定の医療機関に依存しない経営を目指すべきと考えます。



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