薬剤師による調剤薬局の仕事解説

事務仕事から人材育成まで、調剤薬局の仕事すべてを管理薬剤師が解説します。

薬剤師は転職サイトに登録する前に漫画「エンゼルバンク」を読め

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転職しようとしている薬剤師のみなさん。転職活動を一旦止めて、この記事を読んで下さい。

転職サイトを紹介するとか、そういった類の記事ではありません。転職で失敗しないための方法を紹介した記事です。

この記事では、転職で失敗しないための方法と、それを学べる漫画を紹介します。転職の行動を起こす前に、転職経験者の私の話を聞いてください。



転職サイトに登録する前に「エンゼルバンク」を読もう

結論から言います。転職を成功させたいのであれば、漫画「エンゼルバンク」を読んでください。全14巻の漫画ですが、読むのは第1巻だけでいいです。ブックオフで立ち読みでもいいので、絶対に読んでください。

私が言いたいことは以上なのですが、なぜ読まないといけないのか納得しない方が大半だと思いますので、ここから先は、私がなぜ「エンゼルバンク」を読むように勧めるかを説明します。


転職の成功、失敗とは何か?

まず、転職の成功、失敗とは何かを考えます。

転職の成功とは何かと問われれば、「年収が上がること」と答える方が多いのではないでしょうか。

確かに、年収は就職先を決める重要な要素のひとつですが、「年収が上がりさえすれば、職場の人間関係や働きがいなんかどうでも良い」と考える人は少数派だと思います。

つまり、年収の多寡だけでは転職の成功、失敗は決まらないということです。

では、転職の成功、失敗とは一体何なのか?

それは人それぞれです。絶対的な成功もなければ、絶対的な失敗もありません。

だからこそ、転職活動を始める前にあなた自身が「自分にとって転職の成功とは何か?」をきちんと定義し、成功に向かって転職活動を進めることが必要なのです。


転職の成功を把握するためのツール「五角形」

「自分にとって転職の成功とは何か?」を把握するためのツールを紹介します。

それは「五角形」です。「エンゼルバンク」第1巻に詳しく描かれていますが、「エンゼルバンク」未読の方にも分かるように説明します。

「エンゼルバンク」の作者、三田紀房氏のオフィシャルブログに漫画の一部が抜粋して掲載されているので、まずはこちらをご覧ください。

三田紀房 公式ブログ - 【エンゼルバンク-転職は人生のチューニング-】その4 - Powered by LINE

抜粋部分の状況を説明します。

男性(転職希望者)と女性(転職代理人)がやりとりしています。

男性にとっての転職の成功を探るため、女性は男性に、白紙の真ん中に大きな五角形を描かせます。さらに、五角形の各頂点に「仕事をする上で大事だと思うこと」をひとつずつ書かせます。

男性は、給料、安定性、将来性、労働時間、やりがいと書きました。

次に、ここに書かれた5つの要素を用いて、男性に現在の状況を自己評価させました。
各要素5点満点、合計25点満点の五角形レーダーチャートを作ったわけです。

男性は現在の自分の状況を、給料2点、安定性4点、将来性2点、労働時間3点、やりがい2点、合計13点と評価しました。

女性は言います。「転職後、それぞれの点数を何点にしたいか書き込んでください」
男性は「そりゃあ、せめてこれくらいは…」と全項目4点、合計20点としました。

男性は「転職するんだから、今よりよくならなくちゃ」と言います。
しかし女性は、「転職したからといって、総合点が増えるというのは勘違いです。転職はリセットではなく、チューニングですから」と男性を諭します。

大事なことなので、もう一度書いておきます。

転職したからといって、総合点が増えるというのは勘違いです。転職はリセットではなく、チューニングです。

抜粋部分はここで終わっていますが、この後、会話は次のように続きます。

女性は言います。
「あなたの現在の持ち点は13点です。これ以上増やすことはできません。この持ち点13点の配分をかえる、チューニングをしましょう。あなたの持ち点13点に収まるように調節してください。自分のストレスが最も軽い状態に周波数を合わせるのです」

男性は悩みながらも、給料2点、安定性2点、将来性4点、労働時間1点、やりがい4点、合計13点としました。

つまり男性は、給料は据え置き、労働時間が長くなり、安定性が低くなってもいいから、やりがいと将来性がある仕事をやりたいという結論に達したわけです。

「五角形」というツールを使うことで、男性にとって転職の成功は給料は据え置き、労働時間が長くなり、安定性が低くなってもいいから、やりがいと将来性がある仕事に就くことだと分かりました。


五角形の点数を増やす方法

転職をしても五角形の総合点数を増やすことはできない、という前提に立つと、総合点数を増やす方法はひとつだけです。

それは、現在の職場での満足度を高めることです。先程の男性の例で言えば、今の職場で評価され給料があがったり、信頼を得てやりがいのある仕事をまかせられるようになれば、総合点数が増えるわけです。

在職期間が長くなれば、給料はあがりますし、やりがいのある仕事がまわってくるようになるのが普通ですから、基本的には安易に転職せず、今の職場で総合点数を高めるのが、より良い転職をする唯一の方法です。

これは感覚的にも理解しやすいと思います。

薬局現場での仕事はすべてやりきったから、今後はエリアマネージャーとして働きたい、エリアマネージャーとして転職したいと思ったとしても、あなたにエリアマネージャーとしての経験がなければ、あなたをエリアマネージャーとして雇ってくれる会社はどこにもないでしょう。

エリアマネージャーとして転職したいならば、まずは今の職場でエリアマネージャーとして実務経験を積む必要があるのです。


なぜ薬剤師の転職者に「エンゼルバンク」を勧めるのか

「エンゼルバンク」を読むことで、転職の成功とは何か、転職を成功させるために何をすればよいか、を知ることができます。

ここまでの話は薬剤師に限らず、すべての職業に共通して言えることです。

ここからは、なぜ薬剤師の転職者に「エンゼルバンク」を勧めるのかを説明します。

なぜ、薬剤師の転職者に「エンゼルバンク」を勧めるのか。それは薬剤師の転職市場が超売り手市場(つまり転職者に超有利)だからです。

薬剤師の転職市場は超売り手市場です。薬剤師が転職したいと考えて本気で行動したならば、1日で転職先から内定をもらえるでしょう。求人を出している企業(調剤薬局やドラッグストア)は絶対的に薬剤師数が不足していますので、よほどの理由がない限り、転職者を断ることはありません。

このような超売り手市場の転職市場においては、転職会社は転職者に対して手抜きの対応をするようになります。

通常、転職会社は、転職者の希望、適性などを把握した上で、転職の成功のために転職者を教育、サポートします。しかし、超売り手市場においては、転職者の適性を把握せず、転職者への教育、サポートがおざなりであっても、転職者の希望に沿った求人さえ提示すれば、転職が成立します

したがって、薬剤師の転職者は、転職会社からまともなサポートや教育は受けられないと覚悟しておかなければなりません。

そして、転職会社からまともなサポートや教育を受けられないからこそ、転職者自身が、自分にとって転職の成功とは何か、転職を成功させるために何が足りないか、何をすればよいのかを理解しておく必要があるのです。

これが、薬剤師の転職者に「エンゼルバンク」を勧める理由です。


本当に転職会社の対応は手抜きなのか

ここからは私の体験談をお話します。

私は薬学部卒業後、新卒でとあるチェーン調剤薬局に就職しました。そこで4年間働き、結婚を機に今の会社(別のチェーン調剤薬局)に転職しました。

前職では管理薬剤師の経験はありませんでしたが、同期の社員がポツポツと管理薬剤師になりはじめ、私もそろそろ管理薬剤師になる時期でした。

私は転職するため、転職サイトに登録しました。登録後すぐに担当者から電話がかかってきました。電話で転職理由、転職先の希望などを聞かれました。

私は「私が今の会社でどんな仕事をしてきたか、どういう苦労をして、どういう風に困難を乗り越えてきたかとか聞かれるんだろうな」と思っていましたが、そんなことは全く聞かれませんでした。仕事内容に関して聞かれたのは「管理薬剤師の経験はありますか?」だけでした。「ありません」と答えたら、それ以上は何も聞かれませんでした。

電話で転職先の希望(現在の住所から電車で1時間以内、社宅に住める、薬局)を聞いた担当者は、条件に当てはまる求人を10件くらい見繕って私にメールしてくれました。そして、その中から3社ほど選んで面接を受け、その中の1社に転職しました。

そんなこんなで無事に転職は終わりましたが、私が担当者に対して思ったことは「え?これが転職会社の仕事?こんなことで100万円以上のお金を転職先からもらうんだ」です。

何か助言をくれるわけでもなく、転職先に交渉して良い条件を引き出してくれるわけでもありませんでした。そもそも私のことを何も知らないので(知っているのは管理薬剤師経験がないということだけ)、助言のしようもないし、転職先に交渉のしようもなかったはずです。

私は今の職場にそこそこ満足しているので、結果的には成功した転職だと思っています。しかし、「転職会社の対応は手抜きじゃね?」というのはいまだに思います。

当時の私は「五角形」など知りませんし、担当者が自己分析の方法を教えてくれることもありませんでした。私が満足しているから良かったものの、現在の職場が私に全く合っていない可能性だって大いにあったのです。

私が例外的にハズレの担当者に当たっただけという可能性もありますが、おそらくそんなことはないと思います。手抜きの対応でも転職が成立するからこそ、手抜きの対応が存在しているのだと思います。

担当者の質の高さをアピールする転職会社は多いですが、私はそれに対して懐疑的です。全部ではないにしても、手抜きの担当者(あるいは、そもそも知識や経験が足りない担当者)に当たる確率は結構高いだろうと予想します。

そのような状況だからこそ、薬剤師の転職者は、転職会社からまともなサポートや教育は受けられないと覚悟し、まともなサポートを受けられたらラッキーくらいに考え、自分自身がしっかりしている必要があるのです。

だから、もう一度言います。転職サイトに登録する前に漫画「エンゼルバンク」を読みましょう。



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