薬剤師による調剤薬局の仕事解説

事務仕事から人材育成まで、調剤薬局の仕事すべてを管理薬剤師が解説します。

薬局で初めて部下を持ったときに考えたこと

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私が薬剤師になって8年経ちました。転職を一度経験し、現在の勤務先で働き始めて4年になります。3年前から管理薬剤師として勤務するようになり、生まれて初めて数人の部下を持ちました。上司として働くことになり、部下をうまく生かしてチームとして成果をあげることを求められるようになりました。

上司としてどういう方針で取り組めばよいのか右も左も分からない中、先輩に話を聞いたり、本を読んだりしてたくさんの失敗を積み重ね、最近ようやくひとつの答えを見つけられたように感じています。

ここでは、私が初めて部下を持ったときに考えたこと、考えた結果どういう答えにたどり着いたかなどを紹介します。



管理薬剤師に就任した当時の状況

私は上場企業のチェーン薬局薬剤師として勤務しています。上場企業ですから売上・利益を増やすことを要求されており、来局する患者をさばくだけではなく、その他の様々な活動を行っています。詳しくは以下の記事をご覧ください。年収だけでなく勤務先での取り組み内容が書かれています。

このような活動で成果を出すためには、私1人が頑張るのではなく、薬局全体がチームとしてひとつの目的に対して能動的に取り組んでいかなかればなりません。

管理薬剤師に就任した当時、私は上司として部下に指示を出し、失敗があれば修正し、自らも模範となるべく取り組まなければならない環境にありましたが、どういう方針で進めて行けばよいか全くわかっていませんでした。

当時、私には薬剤師2人、医療事務2人、合計4人の部下がいました。薬剤師2人(Aさん、Bさんとします)の仲が悪く、お互いに会話なし、業務上必要なホウレンソウもしないという状況でした。

私には、仲が悪い原因はAさんにあるように見えました。BさんはAさん以外の職員とは仲が良くうまく連携して働いていました。一方でBさんはAさん以外の職員とも良い関係ではなく、挨拶もできず、声も小さく、何を考えているのかわからず、Bさん以外の職員もストレスを感じていたからです。

私の当時の方針

このような状況の中でも、チームとして連携していかなれければいけません。そこで私は、「Aさんをまともな人間に育成する」という方針を密かに心の中に打ち立てました。諸悪の根源であるAさんがまともな人間になれば、すべてがうまくいくと考えてのことでした。

その日から、私のAさんへの指導が始まりました。
「自分が社会人として足りないと思うことを紙に書いて私に提出してください」
「自分から先に挨拶をしてください。他人に先に挨拶された回数を数えて私に報告してください」
「このビジネス寓話を読んで感想を書いて私に提出してください」
など業務命令の名のもとに様々な指示を出しました。メディカルナレッジの教育関連講座に触発されて、そのような指示を出していたように記憶しています。

部下の育成失敗

その結果、Aさんはどうなったか。他店舗に異動になってしまいました。Bさんがストレスから体調を崩し、Aさんが異動するか、Bさんが異動するかを選ばざるを得なくなったためです。

結果として私の部下育成計画は失敗に終わってしまいました。Bさんが体調を崩さず、Aさんの育成を継続していたとしてもやはり失敗していただろうと思います。私はなぜ失敗してしまったのかを考えました。そこで次のような答えにたどり着きました。

<失敗の原因>
・焦点をAさんの内面に当ててしまっていた
・Aさんの状況に合わせた育成を行わなかった
・Aさんとのコミュニケーションが不足していた
ひとりで考えていたわけではなく、いろいろな本を読み、上司や先輩に相談し、この答えにたどり着きました。

「教える技術」から学んだこと

ここからは答えにたどり着くまでに読んだ本の中でも、特に大きな影響を与えてくれた本「教える技術」の内容を紹介しながら、私の失敗を振り返りたいと思います。

失敗の原因1.焦点をAさんの内面に当ててしまっていた

「教える技術」は、人間の行動に焦点を当てなさいと教えてくれます。

ビジネスの成果や結果は、すべて社員一人ひとりの「行動の集積」によって成り立っています。ですから、結果や成果を変えたければ、「行動」を変える以外に方法はありません。(6p)

(世の上司・先輩の多くは)部下や後輩がこちらの思い通りの仕事ぶりを発揮できない原因は、彼らの性格や精神状態にあると考え、これを正さない限り改善は見込めないと思っています。しかし、そう考えている限り、問題解決はきわめて困難だと言わざるを得ません。(22p)

私の失敗は、問題の原因を「Aさんがまともな人間でないこと」と考え、「Aさんをまともな人間にすること」をゴールとしてしまったことです。「まともさ」という曖昧で非常に内面的な事象を焦点にしてしまったために、達成が困難な目標となってしまいました。また内面を問題としたため、Aさんの自尊心を大きく傷つけてしまっただろうと今になって思います。

現在の私であれば、問題の原因を「Aさんが挨拶、ホウレンソウができていないこと」と考え、「Aさんが挨拶、ホウレンソウをできるようになること」をゴールとして設定します。Aさんの内面は一切問題にせず、「挨拶、ホウレンソウ」という行動ができるかどうかだけに焦点を当てるでしょう。Aさんが挨拶、ホウレンソウをできるようになっても問題が解決しなければ、問題の原因がそれではなかったということであり、私の分析が間違っていたということです。

失敗の原因2.Aさんの状況に合わせた育成を行わなかった

私は「自分が社会人として足りないと思うことを紙に書いて私に提出してください」という指示をAさんに出し、自分自身の欠点について考えてもらおうとしました。自分自身で欠点に気づくことで、欠点を修正してくれるだろうという思惑があったのですが、これも失敗でした。

「教える技術」によると、考える力は基本的なことができて初めて身につくものであって、それができていない段階で「考えること」を求めることはできません。

まだ基本的な仕事が充分にできない部下に向かって“自分で考えろ”と言い放つような指導をしている人がいます。まだ四則演算を習得していない子どもに、方程式を使って解く文章問題をいきなり渡して、「自分で考えろ」なんてことするでしょうか?しませんよね。ところがそういうことが、職場では実際に起きているんです。(105p)

成長の段階として、①言われてもできない、②言われればできる、③言われなくてもできるの3段階がありますが、③の段階に至ったときに考える力を要求すべきだったのです。私は①の段階のAさんに対して考える力を求めてしまいました。結果としてAさんに無用な劣等感を植え付けるだけになってしまいました。

Aさんに対しては、挨拶が必要なのか、なぜホウレンソウが必要なのかを説明し、挨拶、ホウレンソウができるようになることを目標とすべきでした。

失敗の原因3.Aさんとのコミュニケーションが不足していた

「教える技術」は、社員同士のコミュニケーションが業績向上の重要な要素であると教えてくれます。

以前コンサルティングを担当したある企業では、社員同士の対面時間、つまりコミュニケーションを取っている時間などを測定・記録できる小型コンピューターを社員全員に携帯させて、そのデータを分析しました。そして、同じような業務を同じように行っている営業部門どうしを比較したところ、業績の上がっている組織は、そうでない組織と比べて、コミュニケーションの量が3倍以上多かったのです。(33p)

実は私自身、Aさんを苦手をしており、なるべくAさんとコミュニケーションをとらずに機械的に育成したいと考えていました。それが失敗だったのです。本当は積極的にコミュニケーションを取り、「私のことを気にかけてくれているんだ」とAさんに思わせなければならなかったのです。

もっと言えば、本当はAさんをほめなければいけなかったと感じます。

ビジネスマンにとって何より効果的なのは「上司にほめられること」「上司から認めてもらうこと」。(111p)

よく課長職の方などから「部下の気持ちがわからなくて……」という相談を受けるのですが、いつも私はこう答えています。気持ちなんてわからなくていいです。その人の行動に焦点を当てて、やったことをきちんと認める、しっかりほめる、ということをしてください。(113p)

思い返せば、AさんはAさんなりに努力していたように思えます。挨拶を返す回数は増えていましたし、報告や提出の指示はきちんと納期を守って行っていました。そういう些細なことをもっとほめておくべきだったと反省しています。

現在の私

その後私は異動となり、別の店舗で管理薬剤師として勤務しています。現在の店舗にはAさんのようないわゆる問題社員はいません。しかし「教える技術」で学んだことは誰にでも通用することだと思っています。過去の失敗を活かし、次の成功につなげることができるよう、謙虚に学んで大胆に行動していきたいと思います。



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