薬剤師による調剤薬局の仕事解説

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麻疹、風疹、おたふくかぜ、みずぼうそう、はしか、流行性耳下腺炎についてまとめてみた

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麻疹、風疹、おたふくかぜ、みずぼうそう、はしか、流行性耳下腺炎。みなさんはこれらの区別がつきますか?

何を言っているんだ当たり前だ、と怒られそうですが、私はいつも混同してしまうのです。

頭の中を整理するために、この記事では麻疹、風疹、おたふくかぜ、みずぼうそう、はしか、流行性耳下腺炎についてまとめます。



一覧表

はじめに、麻疹、風疹、おたふくかぜ、みずぼうそう、はしか、流行性耳下腺炎についての一覧表を示します。

麻疹 風疹 流行性耳下腺炎 水痘
別名 はしか 三日はしか ムンプス
おたふくかぜ
みずぼうそう
原因ウイルス 麻疹ウイルス 風疹ウイルス ムンプスウイルス 水痘・帯状疱疹ウイルス
感染源 気道分泌物 気道分泌物 気道分泌物 気道分泌物、水疱
感染経路 空気感染 飛沫感染 飛沫感染 空気・接触感染
症状 風邪様症状
結膜炎
二峰性発熱
発疹
口腔粘膜の荒れ
発熱
発疹
リンパ節の腫脹
耳下腺の腫脹
発熱
頭痛
咽頭痛
発疹
予防接種 定期接種 定期接種 任意接種 定期接種
治療 対症療法のみ 対症療法のみ 対症療法のみ 抗ウイルス薬
出席停止期間 解熱後3日を
経過するまで
発疹が消失
するまで
耳下腺、顎下腺又は
舌下腺の腫脹が発現した後
5日を経過し、かつ、
全身状態が良好になるまで
すべての発疹が
痂皮化するまで
WEBサイト 厚生労働省
Wikipedia
厚生労働省
Wikipedia
Wikipedia 厚生労働省
Wikipedia
各疾患の詳細解説は後述しますが、予防接種と学校感染症について、先に解説します。

定期接種と任意接種

予防接種は定期接種と任意接種に大別できます。

定期接種とは予防接種法で定められた予防接種であり、多くの自治体では定められた期間内に接種する定期接種の場合、公費助成により無料で実施されます。定期接種に関する情報は以下のWEBサイトで得ることができます。

任意接種とは定期接種以外の予防接種であり、予防接種法で定められていないもの、定期接種であっても定められた期間外に接種するものを言います。任意接種の料金は全額自己負担ですが、自治体によっては公費助成制度がある場合があります。

上の表で言うと、麻疹、風疹、水痘の予防接種は定期接種であり、流行性耳下腺炎の予防接種は任意接種です。

学校感染症

麻疹、風疹、流行性耳下腺炎、水痘はすべて第二種の学校感染症に指定されています。

学校感染症とは学校保健安全法施行規則第18条で、「学校において予防すべき感染症として定められた感染症」であり、第二種とは「放置すれば学校で流行が広がってしまう可能性がある飛沫感染する感染症」のことです。

学校感染症と診断された場合は、学校にその旨を届け出ることにより出席停止となります。出席停止期間については、上の表をご覧ください


麻疹

麻疹は麻疹ウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症であり、はしかとも呼ばれます。

麻疹ウイルスの感染力は非常に強く、空気感染、飛沫感染、接触感染でヒトからヒトへ感染が伝播します。免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症し、一度感染して発症すると一生免疫が持続すると言われています。

治療

症状として発熱、倦怠感、上気道炎症状、結膜炎症状、発疹などが出現しますが、特異的治療法は存在しません。

解熱剤、鎮咳去痰薬による対症療法や輸液、酸素投与などが行われます。

予防

ワクチン接種による予防が最も重要です。麻疹は空気感染するため、手洗いやマスクでは予防ができません。

麻疹の予防接種は定期接種ですので、対象者は原則自己負担なしで接種可能です。定期接種では接種を2回行います。期間はそれぞれ以下のとおりです。

  • 第1期:生後12か月〜生後24か月未満
  • 第2期:小学校入学1年前の4月1日〜小学校入学の年の3月31日

出席停止期間

麻疹は第二種の学校感染症に指定されており、解熱後3日を経過するまでは出席停止となります。


風疹

風疹は風疹ウイルスによる急性熱性発疹性感染症であり、三日はしかとも呼ばれます。

風疹ウイルスの感染力は、麻疹ウイルスほど強くありませんが、インフルエンザよりは強いです。

治療

症状として発熱、発疹、リンパ節腫脹などが出現しますが、臨床症状だけで風疹と診断するのは困難です。

また特異的治療法は存在せず、対症療法として発熱、関節炎などに対しては解熱鎮痛剤が用いられます。

予防

ワクチン接種による予防が最も重要です。

風疹の予防接種は定期接種ですので、対象者は原則自己負担なしで接種可能です。定期接種では接種を2回行います。期間はそれぞれ以下のとおりであり、麻疹の予防接種と同期間です。

  • 第1期:生後12か月〜生後24か月未満
  • 第2期:小学校入学1年前の4月1日〜小学校入学の年の3月31日

出席停止期間

風疹は第二種の学校感染症に指定されており、発疹が消失するまでは出席停止となります。

妊娠初期の罹患

免疫のない女性が妊娠20週頃までに風疹に罹患すると、風疹ウイルスが胎児に感染して、先天異常を含む様々な症状を呈する先天性風疹症候群が出現することがあります。

妊娠前であれば未接種、未罹患の場合、ワクチン接種を受けることを積極的に検討すべきですが、既に妊娠しているのであればワクチン接種を受けることが出来ませんので、風疹が発生している地域では可能な限り外出を避け、人ごみに近づかないようにするなどの注意が必要です。


流行性耳下腺炎

流行性耳下腺炎はムンプスウイルスの感染によって発生するウイルス性の感染症であり、おたふくかぜ、ムンプスとも呼ばれます。

ムンプスウイルスの感染力は強いものの、感染しても症状が現れない不顕性感染も多く、30~35%は不顕性感染と言われています。

治療

唾液腺の腫脹・圧痛、嚥下痛、発熱を主症状として発症しますが、特異的治療法は存在しません。

対症療法として発熱などに対しては鎮痛解熱剤の投与を行います。

予防

ワクチン接種による予防が最も重要です。

流行性耳下腺炎の予防接種は任意接種ですので、基本的には自費で接種します。日本小児科学会は、予防効果を確実にするために2回接種が必要としており、以下のようなスケジュールでの接種を推奨しています。

  • 1回目:1歳を過ぎたらなるべく早期
  • 2回目:小学校入学1年前の4月1日〜小学校入学の年の3月31日

出席停止期間

流行性耳下腺炎は第二種の学校感染症に指定されており、耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまでは出席停止となります。


水痘

水痘は水痘・帯状疱疹ウイルスの感染による感染症であり、みずぼうそうとも呼ばれます。

水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染による症状が水痘であり、水痘治癒後に水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性することで出現する症状を帯状疱疹と呼びます。帯状疱疹については以下の記事をご覧ください。

治療

症状としては、全身に発疹が出現します。発疹は水ぶくれになった後、かさぶたになり、すべての発疹がかさぶたになったときに治癒したとみなされます。

治療として抗ウイルス薬であるアシクロビル(ゾビラックス)、バラシクロビル(バルトレックス)、ファムシクロビル(ファムビル)などの内服や静脈注射を行います。

予防

ワクチン接種による予防が最も重要です。

水痘の予防接種は定期接種ですので、対象者は原則自己負担なしで接種可能です。定期接種では接種を2回行います。生後12ヶ月から36ヶ月未満までに2回接種しますが、以下の期間での接種が推奨されています。

  • 1回目:生後12ヶ月〜15ヶ月未満
  • 2回目:1回目接種終了後、6〜12ヶ月の間

出席停止期間

水痘は第二種の学校感染症に指定されており、すべての発疹が痂皮化するまでは出席停止となります。

まとめ

麻疹、風疹、おたふくかぜ、みずぼうそう、はしか、流行性耳下腺炎についてまとめました。

個人的には、名称が似ていること、別名が多いことなどから混同してしまいがちなので、上の一覧表を印刷して携帯しておこうと思っています。



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