薬剤師による調剤薬局の仕事解説

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麻薬加算、向精神薬加算、覚せい剤原料加算、毒薬加算の完全解説

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この記事では麻薬、向精神薬、覚せい剤原料、毒薬を交付したときに算定できる点数について解説します。

通常、レセコンが自動計算してくれるものですから、この点数について知らなくても困ることはほとんどありません。しかし、誤算定防止のため、管理薬剤師にとっては必須の知識となります。



正式名称は「麻薬、向精神薬、覚せい剤原料又は毒薬加算」

この記事で解説するのは、「麻薬、向精神薬、覚せい剤原料又は毒薬加算」についてです。長いので正式名称で呼ばれることはあまりありません。

「麻薬加算」「向精神薬、覚せい剤原料又は毒薬加算」と2つに分けて呼ばれたり、「麻薬等加算」と短縮して呼ばれたりすることがありますが、正式名称は「麻薬、向精神薬、覚せい剤原料又は毒薬加算」です。

長いので、この記事でも以降は麻薬等加算、麻薬等加算(麻薬)、麻薬等加算(向精神薬、覚せい剤原料、毒薬)などと省略して書きます。

麻薬、向精神薬、覚せい剤原料又は毒薬加算の点数

麻薬等加算について「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」には次のように記載されています。

麻薬、向精神薬、覚せい剤原料又は毒薬加算

ア 「向精神薬」とは、麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)第2条第6号の規定に基づく同法別表第3に掲げる向精神薬をいう。

イ 本加算は、麻薬、向精神薬、覚せい剤原料又は毒薬を調剤する場合において、処方中に麻薬が含まれているときに1調剤行為につき70点、それ以外のときに1調剤行為につき8点を加算するものであり、処方中の麻薬、向精神薬、覚せい剤原料又は毒薬の品目数、投薬日数に関係なく当該所定点数を算定する。

ウ 使用した薬剤の成分が麻薬、覚せい剤原料又は毒薬であっても、その倍散の製剤若しくは予製剤等で規制含有量以下のため麻薬、覚せい剤原料又は毒薬の取扱いを受けていない場合は、本加算は算定できない。

エ 重複した規制を受けている薬剤については、当該薬剤が麻薬である場合は1調剤につき70点を算定し、それ以外の場合は1調剤につき8点を算定する。

オ 本加算は、内服薬のほか、屯服薬、注射薬、外用薬についても算定できる。

赤字にした部分が一番大切なところです。麻薬とそれ以外で算定できる点数が異なります。麻薬は70点、それ以外は8点です。

麻薬等加算と混同しやすい点数として、麻薬管理指導加算があります。麻薬管理指導加算は、麻薬が処方された患者に対し要件を満たす指導を行った場合に算定できる点数です。麻薬等加算は処方に麻薬等が含まれる場合に自動的に算定できる点数ですので、全く別物です。間違えないようご注意ください。

麻薬管理指導加算については以下で詳しく解説していますのでご覧ください。



麻薬等加算は1調剤行為につき算定できる

麻薬等加算は1調剤行為につき算定できます。内服薬の場合、調剤行為とは服用時点と投与日数が同一のものの集まりです。つまり服用時点または投与日数が異なる場合、別の調剤行為という扱いになります。

処方例を挙げて説明します。

処方例1

<処方例1>
オキシコンチンTR錠20mg 2錠
オキシコンチンTR錠5mg 2錠
分2 (9時、21時) 14日分
処方例1では、麻薬等加算(麻薬)70点を1回だけ算定できます。2種類の麻薬が処方されていますが、服用時点と投与日数がともに同一であり、調剤行為は1つという扱いです。

処方例2

<処方例2>
オキシコンチンTR錠20mg 2錠
分2 (9時、21時) 10日分
オキシコンチンTR錠5mg 2錠
分2 (9時、21時) 14日分
処方例2では、麻薬等加算(麻薬)70点を2回算定できます。残薬のため処方日数が減らされたケースなどが当てはまるのではないかと思います。

麻薬等加算(麻薬)70点を2回算定できるようになるため、投与日数が減ったにもかかわらず窓口負担金額が増える可能性があります。患者トラブルになる可能性を孕んでいます。

処方例3

<処方例3>
オキシコンチンTR錠20mg 2錠
デパス錠0.5mg 2錠
分2 (9時、21時) 14日分
処方例3では麻薬等加算(麻薬)70点を1回だけ算定できます。向精神薬(デパス)が処方されていますが、麻薬等加算(向精神薬、覚せい剤原料、毒薬)8点は算定できません。

算定の優先順位は麻薬等加算(麻薬) > 麻薬等加算(向精神薬、覚せい剤原料、毒薬)です。

処方例4

<処方例4>
デパス錠0.5mg 2錠
分2 朝夕食後 14日分
デパス錠0.5mg 10錠
不安時 1回1錠 10回分
処方例4では麻薬等加算(向精神薬、覚せい剤原料、毒薬)8点を2回算定できます。同一医薬品が内服と頓服で出ているケースですが、それぞれ別の調剤行為という扱いになります。

まとめ

麻薬等加算は自動算定できる点数なので、算定の可否はレセコンが自動判定します。したがって、算定要件などの詳細を理解しておく必要性は低いです。

しかし上で挙げた処方例2などのケースは患者トラブルに発展する可能性があるため、必要に応じて患者に説明できるようにしておいた方が良いでしょう。



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