薬剤師による調剤薬局の仕事解説

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服薬情報等提供料の完全解説

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服薬情報料等提供料を知ってるでしょうか?あまり算定しない点数ですので、知らない方が多いと思います。

この記事では服薬情報等提供料について解説します。完全に理解できるようわかりやすく書いていきます。



服薬情報等提供料とは

服薬情報提供料とは何なのか?「調剤報酬点数表」および「調剤報酬点数表に関する事項」には次のように記載されています。

服薬情報等提供料 20点

1 患者、その家族等若しくは保険医療機関の求めがあった場合又は薬剤師がその必要性を認めた場合において、患者の同意を得た上で、薬剤の使用が適切に行われるよう、調剤後も患者の服用薬の情報等について把握し、患者、その家族等又は保険医療機関へ必要な情報提供、指導等を行った場合に、所定点数を算定する。なお、保険医療機関への情報提供については、服薬状況等を示す情報を文書により提供した場合に月1回に限り算定する。これらの内容等については薬剤服用歴に記録すること。

2 区分番号13の2に掲げるかかりつけ薬剤師指導料、区分番号13の3に掲げるかかりつけ薬剤師包括管理料又は区分番号15に掲げる在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者については、算定しない。

服薬情報等提供料

(1) 服薬情報等提供料は、保険薬局において調剤後も患者の服用薬や服薬状況に関する情報等を把握し、患者若しくはその家族等又は保険医療機関に当該情報を提供することにより、医師の処方設計及び患者の服薬の継続又は中断の判断の参考とする等、保険医療機関と保険薬局の連携の下で医薬品の適正使用を推進することを目的とするものである。

(2) 服薬情報等提供料は、以下の場合に算定できる。
ア 処方せん発行保険医療機関から次の(イ)若しくは(ロ)に掲げる情報提供の求めがあった場合、又は保険薬局の薬剤師が薬剤服用歴に基づき患者の服薬に関する次の(イ)、(ロ)若しくは(ハ)、に掲げる情報提供の必要性を認めた場合にその理由とともに、患者の同意を得て、現に患者が受診している保険医療機関に対して、当該患者の服薬状況等について書面又は電子的な方法(以下「文書等」という。)により提供したときに算定できる。
(イ) 当該患者の服用薬及び服薬状況
(ロ) 当該患者に対する服薬指導の要点、患者の状態等
(ハ) 当該患者が容易に又は継続的に服用できるための技術工夫等の調剤情報

イ 患者又はその家族等の求めがあった場合、患者の同意を得て、次に掲げる情報等について、患者又はその家族等に対して速やかに提供等し、当該患者の次回の処方せん受付時に提供した情報に関する患者の状態等の確認及び必要な指導を行った場合に算定できる。
(イ) 緊急安全性情報、安全性速報や医薬品・医療機器等安全性情報など、処方せん受付時に提供した薬剤情報以外の情報で患者の服薬期間中に新たに知り得た情報
(ロ) 患者の服薬期間中に服薬状況の確認及び必要な指導

(3) ここでいう「服薬状況」とは、患者が薬剤の用法及び用量に従って服薬しているか否かに関する状況のほか服薬期間中の体調の変化等の患者の訴えに関する情報を含む。患者に自覚症状がある場合には、当該自覚症状が薬剤の副作用によるものか否かに関する分析結果も含めて情報提供することとし、また、患者に対する服薬指導は、当該分析結果を踏まえたものとする。なお、患者の自覚症状の分析に当たっては、「重篤副作用疾患別対応マニュアル」(厚生労働省)等を参考とすることが望ましい。

(4) (2)のアについては、以下の場合も含まれる。
ア 保険薬局において患者の服用薬の残薬を確認し、処方せんを発行した保険医療機関に対して情報提供を行った場合
イ 「区分番号00」の調剤基本料の「注8」に掲げる分割調剤において、2回目以降の調剤時に患者の服薬状況、服薬期間中の体調の変化等について確認し、処方医に対して情報提供を行った場合
ウ 保険医療機関からの求めに応じ、入院前の患者の服用薬について確認し、依頼元の医療機関に情報提供した場合

(5) (2)のアの(ハ)については、処方せんの記入上の疑義照会等では算定できない。

(6) 患者1人につき同一月に2回以上服薬情報等の提供を行った場合においても、月1回のみの算定とする。ただし、2以上の保険医療機関又は診療科に対して服薬情報等の提供を行った場合は、当該保険医療機関又は診療科ごとに月1回に限り算定できる。

(7) 保険医療機関への情報提供に当たっては、別紙様式1又はこれに準ずる様式の文書等に必要事項を記載し、患者が現に診療を受けている保険医療機関に交付し、当該文書等の写しを薬剤服用歴の記録に添付する等の方法により保存しておく。

(8) (2)のイについて、患者の服薬期間中に新たに情報提供した事項、服薬期間中及び処方せん受付時に確認した患者の服薬状況等及び指導等については、情報提供の都度、薬剤服用歴の記録に記載する。

(9) 服薬情報等提供料は、「区分番号13の2」のかかりつけ薬剤師指導料、「区分番号13の3」かかりつけ薬剤師包括管理料又は「区分番号15」の在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者については算定できない。

(10) 電子的方法によって、個々の患者の服薬に関する情報等を保険医療機関に提供する場合は、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(平成25年10月)を遵守し、安全な通信環境を確保するとともに、書面における署名又は記名・押印に代わり、厚生労働省の定める準拠性監査基準を満たす保健医療福祉分野の公開鍵基盤(HPKI:Healthcare Public Key Infrastructure)による電子署名を施すこと。

長い引用となりました。

服薬情報等提供料とは何か、簡単に言うと、服用薬や服用状況などに関する情報を、患者または医療機関を提供した場合に算定できる点数です。

さっぱりわからない説明だと思います。ここから詳しく解説します。


服薬情報等提供料にはふたつのパターンがある

服薬情報等提供料の算定にはふたつのパターンがあります。

ひとつは、患者またはその家族に情報提供するパターン。もうひとつは、医療機関に情報提供するパターンです。

患者またはその家族に情報提供するパターン

患者またはその家族に情報提供するパターンについて解説します。「調剤報酬点数表に関する事項」の記載をもう一度掲げます。

患者又はその家族等の求めがあった場合、患者の同意を得て、次に掲げる情報等について、患者又はその家族等に対して速やかに提供等し、当該患者の次回の処方せん受付時に提供した情報に関する患者の状態等の確認及び必要な指導を行った場合に算定できる。
(イ) 緊急安全性情報、安全性速報や医薬品・医療機器等安全性情報など、処方せん受付時に提供した薬剤情報以外の情報で患者の服薬期間中に新たに知り得た情報
(ロ) 患者の服薬期間中に服薬状況の確認及び必要な指導

(3) ここでいう「服薬状況」とは、患者が薬剤の用法及び用量に従って服薬しているか否かに関する状況のほか服薬期間中の体調の変化等の患者の訴えに関する情報を含む。患者に自覚症状がある場合には、当該自覚症状が薬剤の副作用によるものか否かに関する分析結果も含めて情報提供することとし、また、患者に対する服薬指導は、当該分析結果を踏まえたものとする。なお、患者の自覚症状の分析に当たっては、「重篤副作用疾患別対応マニュアル」(厚生労働省)等を参考とすることが望ましい。

赤文字にした部分が、提供すべき情報です。

つまり、患者またはその家族等の求めがあった場合に

  • 服薬指導後に新たに発表された、緊急安全性情報、安全性速報、医薬品・医療機器等安全性情報などの情報を提供する
  • 服薬指導後の服薬状況、副作用状況などをフォローする

のいずれかを行うことで服薬情報等提供料を算定できます。

緊急安全性情報などはPMDAのホームページで公開されています。

医療機関に情報提供するパターン

医療機関に情報提供するパターンについて解説します。「調剤報酬点数表に関する事項」の記載をもう一度掲げます。

処方せん発行保険医療機関から次の(イ)若しくは(ロ)に掲げる情報提供の求めがあった場合、又は保険薬局の薬剤師が薬剤服用歴に基づき患者の服薬に関する次の(イ)、(ロ)若しくは(ハ)、に掲げる情報提供の必要性を認めた場合にその理由とともに、患者の同意を得て、現に患者が受診している保険医療機関に対して、当該患者の服薬状況等について書面又は電子的な方法(以下「文書等」という。)により提供したときに算定できる。
(イ) 当該患者の服用薬及び服薬状況
(ロ) 当該患者に対する服薬指導の要点、患者の状態等
(ハ) 当該患者が容易に又は継続的に服用できるための技術工夫等の調剤情報

(4) (2)のアについては、以下の場合も含まれる。
ア 保険薬局において患者の服用薬の残薬を確認し、処方せんを発行した保険医療機関に対して情報提供を行った場合
イ 「区分番号00」の調剤基本料の「注8」に掲げる分割調剤において、2回目以降の調剤時に患者の服薬状況、服薬期間中の体調の変化等について確認し、処方医に対して情報提供を行った場合
ウ 保険医療機関からの求めに応じ、入院前の患者の服用薬について確認し、依頼元の医療機関に情報提供した場合

赤文字にした部分が、提供すべき情報です。

つまり、処方せん発行医療機関から求めがあった場合、もしくは保険薬局の薬剤師が必要性を認めた場合に

  • 服用状況および残薬状況
  • 分割調剤の2回目以降の服薬状況、体調変化など
  • 入院前の服用薬
  • 技術工夫などの調剤情報
  • 服薬指導内容や患者の状態など

のいずれかの情報を医療機関に提供することで服薬情報等提供料を算定できます。

服薬情報等提供料を算定する上での注意点

服薬情報等提供料を算定する上で注意することを解説します。

患者の同意が必須

服薬情報等提供料の算定要件には「患者の同意を得た上で」と明記されています。したがって服薬情報等提供料を算定するには、患者またはその家族等の事前の同意が必須となります。

かかりつけ患者、在宅患者に対しては算定できない

すべての患者に対して服薬情報等提供料を算定できるわけではありません。かかりつけ薬剤師指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者に対しては、服薬情報提供料を算定できません。

区分番号13の2に掲げるかかりつけ薬剤師指導料、区分番号13の3に掲げるかかりつけ薬剤師包括管理料又は区分番号15に掲げる在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者については、算定しない。

患者の求めに応じて情報提供した場合、次回処方せん受付時のフォローが必須

患者またはその家族の求めに応じて実施する情報提供の場合、提供した情報に関する患者の状態等の確認および必要な指導を行うことで初めて算定要件を満たします。

患者又はその家族等の求めがあった場合、患者の同意を得て、次に掲げる情報等について、患者又はその家族等に対して速やかに提供等し、当該患者の次回の処方せん受付時に提供した情報に関する患者の状態等の確認及び必要な指導を行った場合に算定できる。

医療機関に対して情報提供する場合、算定できるのは月1回だけ

患者に対する情報提供の場合、服薬情報等提供料の算定回数に上限はありません。一方、医療機関に対する情報提供の場合、服薬情報等提供料の算定回数は月1回までと決められています。

保険医療機関への情報提供については、服薬状況等を示す情報を文書により提供した場合に月1回に限り算定する。

医療機関に対して情報提供する場合、情報提供は文書により行う

医療機関に対して情報提供する場合、情報提供は文書により行う必要があります。電話などでの情報提供は算定要件を満たしません。

また、情報提供の書式も決められています。別紙様式1という様式の文書での情報提供が基本です。別紙様式1はこちらから確認してください。

保険医療機関への情報提供に当たっては、別紙様式1又はこれに準ずる様式の文書等に必要事項を記載し、患者が現に診療を受けている保険医療機関に交付し、当該文書等の写しを薬剤服用歴の記録に添付する等の方法により保存しておく。

患者からの電話により服薬指導を行った場合であっても算定できる

服薬指導後に患者から電話があり、電話にて服薬指導を行った場合でも服薬情報等提供料を算定できます。

保険調剤Q&Aから引用します。

Q11 患者又はその家族等の求めに応じて実施した情報提供については、患者や家族からの電話により服薬指導を行った場合であっても算定可能か。

A 算定できる。ただし、本情報提供料の算定について患者の同意が得られている場合であって、かつ次回受付時に再度、服薬状況や患者の体調変化などを確認した場合に限る。

まとめ

服薬情報等提供料を算定しやすいのは、患者の求めに応じて情報提供するケースだと思われます。

患者やその家族からの電話により服薬指導を行った場合であっても算定可能ですから、実は算定の機会が多い点数です。



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